コトリカゴ

「俺も小さい頃に、親父に聞かされただけやから、そない詳しい訳ちゃうけどな。それでもよぅ聞かされた。この徳里村には、双子が産まれたら、村に災いがもたらされる――。そんな言い伝えがあるんや、って」

「災い、ですか?」

 何とも突拍子もないことに、疑心の声音で訊ねてしまう。

「馬鹿げた話やろ? それこそ日本昔ばなしに出てくるような話や。せやけどな、ほんまにその昔、双子が生まれた年を境に、事故やら謎の火事やら、山からの落石やら、良くないことが続いたらしいんや。最終的には疫病が流行って、この村は存続の危機まで陥ったらしいわ」

 阿呆みたいやろ? と言いたげながらも、息子さんはちゃんと教えてくれる。

「そんな時、修行で放浪していたひとりの坊さんが徳里村にやって来た。当時の村長が助けを求めて、坊さんの言う通りにしたら、災いはなくなったんやて。そうしてその坊さんを讃え、崇め、感謝の意味を込めて建てられたんが、二王頭神社や」

 それを聞いた瞬間、何故かぞくっと寒気のようなものが走った。

 しかしこの言い伝えが、じいちゃんの病とどう関係しているのか全く繋がらない。
 何なら全く関係していないような気がして、急かすように訊いてしまった。

「でもその言い伝えが、じいちゃんの病とどう関係あるんですか?」

「まだ話には続きがあるんや。双子が産まれたら災いがある。そう言うたんが、その坊さんやったんや。村が不幸になってるんは、双子の呪いが原因やってな。そうして男と女の女の方が村に捧げられた。そのおかげで平和にはなったが、翌年から徳里村には “奇病” が発症するようになったんや」

「……奇病……」

 速くなっていた鼓動は、音も大きくなる。
 まさか――と、嫌な予感が頭から離れなかった。

「そんなもんある訳ない。なんて嘘くさい、馬鹿な話やとずーぅっと思てた。自分の親父が、実際その病に罹ってしまうまではな。もう分かるやろ? あんたが見たのが、それや」


 つまり。
 じいちゃんはその奇病に罹っていた――。

 言葉が出てこなかった。
 衝撃的過ぎて、ただ息子さんの目を見つめているだけだった。