『――柊雨君、ごめんね。そう言うことで、今日は学校休むね』
「うん、分かった。俺のことは気にしないで。それよりちゃんと体を休めて、安静にしてるんだよ」
『うん。ありがとう』
電話口の向こうから、ごほごほと咳き込む声が聞こえてくる。それから軽く会話を交わして、通話を切った。
食べ掛けていた朝ご飯を再び食べ始めると、母親がお皿を手に持って居間にやって来た。
「今日、莎菜ちゃん学校休むの?」
電話の内容から察したのだろう。訊ねながら、りんごの乗った皿を机の上に置いた。
「うん。喘息がしんどいみたい」
「あら、最近は良くなってたのにね」
――池田家がこの村に引っ越しして来たのは、莎菜の喘息を良くする為で、その甲斐があってか、最近はずっと体調が良かった。
引っ越しして来た当時の中学生の頃は、少し運動しただけで咳が止まらなくなったりして、吸入薬を使っている姿をよく見掛けた。
今でも一応携帯はしているが、使用する回数はぐっと減っている。良い傾向ではあったが、今日は調子が悪いみたいだ。
ここ数日。横井のじいちゃんの葬儀があったし。
昨日は昨日で維織の件があったしな。
思い返せば体調に負荷が掛かること。ストレスを受けることは、少なからずあったと思う。もしそれらが原因なら納得は出来て、早く良くなることを願った。
無理して酷くなるくらいなら、休んで良くなってもらいたい。
ご飯を食べ終えて、食後のデザートのりんごにフォークを刺す。一口齧るとしゃくっといい音が鳴り、程よい甘さの果汁が口の中に広がる。
「あ、そうだ。お見舞いにりんごを持って行ってあげなさいよ。職場の人からお裾分けって言って、多くもらったから」
「そうなんだ。もらっていいの?」
「もちろん」
母親がにこりと笑い、それならーと立ち上がる。
「袋に入れて、机の上に置いておくね」
「分かった。ありがとう。学校から帰って来たら、行ってくるよ」
前髪を耳に掛け、背中まである長い髪をシュシュでひとつに括り、居間を出ていく母親の後ろ姿ははりきっているように見えた。
そんな母親を見送ってからりんごを齧って、再びテレビの方に視線を戻す。
本当ならもうそろそろ家を出る時間だが、今日は莎菜の家に行かないので、もう少しだけ時間の余裕があった。
「しゃり」
りんごを齧る音と、テレビから聞こえてくる声とが混じる。
久し振りののんびりとした朝を過ごし、ひとりで学校にと向かった。
「うん、分かった。俺のことは気にしないで。それよりちゃんと体を休めて、安静にしてるんだよ」
『うん。ありがとう』
電話口の向こうから、ごほごほと咳き込む声が聞こえてくる。それから軽く会話を交わして、通話を切った。
食べ掛けていた朝ご飯を再び食べ始めると、母親がお皿を手に持って居間にやって来た。
「今日、莎菜ちゃん学校休むの?」
電話の内容から察したのだろう。訊ねながら、りんごの乗った皿を机の上に置いた。
「うん。喘息がしんどいみたい」
「あら、最近は良くなってたのにね」
――池田家がこの村に引っ越しして来たのは、莎菜の喘息を良くする為で、その甲斐があってか、最近はずっと体調が良かった。
引っ越しして来た当時の中学生の頃は、少し運動しただけで咳が止まらなくなったりして、吸入薬を使っている姿をよく見掛けた。
今でも一応携帯はしているが、使用する回数はぐっと減っている。良い傾向ではあったが、今日は調子が悪いみたいだ。
ここ数日。横井のじいちゃんの葬儀があったし。
昨日は昨日で維織の件があったしな。
思い返せば体調に負荷が掛かること。ストレスを受けることは、少なからずあったと思う。もしそれらが原因なら納得は出来て、早く良くなることを願った。
無理して酷くなるくらいなら、休んで良くなってもらいたい。
ご飯を食べ終えて、食後のデザートのりんごにフォークを刺す。一口齧るとしゃくっといい音が鳴り、程よい甘さの果汁が口の中に広がる。
「あ、そうだ。お見舞いにりんごを持って行ってあげなさいよ。職場の人からお裾分けって言って、多くもらったから」
「そうなんだ。もらっていいの?」
「もちろん」
母親がにこりと笑い、それならーと立ち上がる。
「袋に入れて、机の上に置いておくね」
「分かった。ありがとう。学校から帰って来たら、行ってくるよ」
前髪を耳に掛け、背中まである長い髪をシュシュでひとつに括り、居間を出ていく母親の後ろ姿ははりきっているように見えた。
そんな母親を見送ってからりんごを齧って、再びテレビの方に視線を戻す。
本当ならもうそろそろ家を出る時間だが、今日は莎菜の家に行かないので、もう少しだけ時間の余裕があった。
「しゃり」
りんごを齧る音と、テレビから聞こえてくる声とが混じる。
久し振りののんびりとした朝を過ごし、ひとりで学校にと向かった。

