無事に維織も見付かり、池田家に戻ると、お母さんが涙を浮かべながら息子の無事を喜んだ。仕事から帰ってきたお父さんも捜索に加わっていたようで、ほっと安心した後に、維織はしっかりと怒られた。
「柊雨君。ありがとう。本当にありがとう」
「いえ。でも本当に、維織君が見付かってよかったです」
何度も何度も頭を下げてくれるお母さんに挨拶をしてから、家を出る。見送りに来てくれる莎菜と一緒に、止めてあった自転車までやって来た。
「柊雨君、大変なことに巻き込んじゃってごめんね。でも本当にありがとう」
「ううん。維織がいなくなったって聞いたら、俺も放っておけないよ」
実の弟ではないが、付き合いは長い。もう自分の弟みたいな存在の男の子を、心配するのは当然みたいなものだった。
「それより話って何だった? こんなことがあったから、聞きそびれちゃったけど」
「あ、うん。とりあえず大丈夫。そこまで急ぎの話じゃないし」
「大事な話じゃなかった?」
「うーん。大事、ではない。と、思う」
視線を斜め上に向けて言う莎菜は、何とも曖昧だった。
てっきり大事な話だと思っていたけど、これはこれで気になってしまう。
「めちゃくちゃあやふやな言い方するなぁ」
つい苦笑して言うと、だってさーと返ってくる。
「私もね、違うとは思ってるんだよ。でもひとりで思っているには、何かもやもやするし。だから柊雨君に話聞いてもらおうっと思って」
「それなら今聞くよ? それか電話かLINEでもいいし」
そう言うと莎菜の顔がそれなら、となる。しかし一言目の口が開いて、やっぱりと閉じられた。
「ちゃんと話したいから、今度でもいい?」
「俺は大丈夫だよ」
うんと答えると、莎菜がありがとうと笑う。
とは言え本当は今知りたい気持ちをしまい、自転車のスタンドを上げた。
「じゃあ」
「うん。気を付けてね」
バイバイと手を振る莎菜と別れ、家に向かって走り出す。
――後から思えばこれが、彼女の身に起こり出した、最初の “異変” だったのかも知れない。
けれど何も知らない俺が気付くことはなく。
また何も知らない莎菜も、これが原因になるとは思いもしない。
徳里村に残る言い伝えが徐々に。
しかし確実に、呪いの手を伸ばし始めていた。
「柊雨君。ありがとう。本当にありがとう」
「いえ。でも本当に、維織君が見付かってよかったです」
何度も何度も頭を下げてくれるお母さんに挨拶をしてから、家を出る。見送りに来てくれる莎菜と一緒に、止めてあった自転車までやって来た。
「柊雨君、大変なことに巻き込んじゃってごめんね。でも本当にありがとう」
「ううん。維織がいなくなったって聞いたら、俺も放っておけないよ」
実の弟ではないが、付き合いは長い。もう自分の弟みたいな存在の男の子を、心配するのは当然みたいなものだった。
「それより話って何だった? こんなことがあったから、聞きそびれちゃったけど」
「あ、うん。とりあえず大丈夫。そこまで急ぎの話じゃないし」
「大事な話じゃなかった?」
「うーん。大事、ではない。と、思う」
視線を斜め上に向けて言う莎菜は、何とも曖昧だった。
てっきり大事な話だと思っていたけど、これはこれで気になってしまう。
「めちゃくちゃあやふやな言い方するなぁ」
つい苦笑して言うと、だってさーと返ってくる。
「私もね、違うとは思ってるんだよ。でもひとりで思っているには、何かもやもやするし。だから柊雨君に話聞いてもらおうっと思って」
「それなら今聞くよ? それか電話かLINEでもいいし」
そう言うと莎菜の顔がそれなら、となる。しかし一言目の口が開いて、やっぱりと閉じられた。
「ちゃんと話したいから、今度でもいい?」
「俺は大丈夫だよ」
うんと答えると、莎菜がありがとうと笑う。
とは言え本当は今知りたい気持ちをしまい、自転車のスタンドを上げた。
「じゃあ」
「うん。気を付けてね」
バイバイと手を振る莎菜と別れ、家に向かって走り出す。
――後から思えばこれが、彼女の身に起こり出した、最初の “異変” だったのかも知れない。
けれど何も知らない俺が気付くことはなく。
また何も知らない莎菜も、これが原因になるとは思いもしない。
徳里村に残る言い伝えが徐々に。
しかし確実に、呪いの手を伸ばし始めていた。

