コトリカゴ

「みゃあ」

 照らされた灯りの中で、茶色い小さな猫が鳴く。よく見ればそこにいるのは1匹ではなく、4匹の子猫がいた。

「わ~。ちっちゃーい」

 みゃあみゃあと鳴く子猫に、莎菜が指を出す。
 まだしっかりした足取りではなく、とてとて歩く様子から、産まれてそう日は経っていなさそうだった。

「猫ちゃんがね、お家の庭にいたの。だからお外に出たんだけど、逃げて行っちゃうんだ」

 ――つまりそれを追い掛けて、林の中に入ってしまった。

 維織が家からいなくなってしまった理由が分かったが、よく無事に見付かったなと改めて思う。

「小さくて可愛い~。野良猫なのかな?」

「たぶんそうだと思う」

 まだ小さいから、何処かに親猫がいそうだが、周囲を照らしてみても姿はない。探し続けていると、代わりに何かが反射してキラリと光る。そこに懐中電灯を向けると、ぽつんと銀色の器がひとつあった。

「……器?」

 近付き見てみると、器の中は綺麗になってはいたが、微かな欠片から餌用に使われているのが分かる。

 誰かがここで餌をあげてるのか? 

 そう思っていると、突然背後からパキと枝を踏む音がした。野生動物、人、何かの気配にハッと警戒が走り、慌てて後ろに振り返る。

「――こんなところで何してんのや?」

 人がやって来たことに驚いた莎菜が、びくと肩を震わせる。咄嗟に弟の手を取り、維織はきょとんとしていた。
 そんなふたりを守るように前に出て、現れた人に懐中電灯を照らす。

「眩しいやろ。下ろせ」

「……し、村長……?」

 眩しさに目を細めながら、そこにいたのは村長の白川さんだった。顔を顰め、俺達を不快そうな視線で見る。

「何でこんなところにおんねん。て――よそもんのガキがおるやないか」

 不愉快そうな態度に、莎菜の顔が曇ったのが分かる。それを受け、懐中電灯を握る力が強くなるが、ぐっと抑えた。

「何も分かってないよそもんが、ちょろちょろすんな。はよ帰れ」

「莎菜。維織。立てるか? 行こう」

 ――お前に言われなくても、すぐ帰るよ!

 彼女とその弟を蔑ろにする態度に、腸が煮えくり返りそうになるのを押し殺して、気持ちが悟られないように呼び掛ける。ふたりが立ち上がると、白川さんの方は見ずにこの場から離れた。

「僕、もっと猫ちゃんと遊びたい。ねぇお姉ちゃん、あっちに戻ってよ」

「ダメ。もう暗いし、帰らなきゃ」

 維織の手を引っ張り、宥めながら莎菜が歩く。

 ――白川さんの視界から俺達が消えるのに、大した時間は掛からなかった。