「維織ー!」
「維織! 聞こえたら声を出してー!」
ゆっくり進みながら、声を出して探していく。林の中はまだ完全な闇ではなかったが、明かりがなければ足元が分からなくなっていた。もう手を伸ばしたくらいの距離しか目視することも出来ず、捜索は困難な状況だった。
それでも莎菜は止めることなく、ずっと維織の名前を叫び続けた。
「維織ー! 維織ー!!」
夏休みの朝や昼の林の中は、鳥の囀りが聞こえていたり、蝉のやかましい鳴き声があって、怖いと思ったことはなかった。
けれど夜の林の中は不気味な程に、鳥や虫の鳴き声、音が全く聞こえてこない。そんな状況が更に不安を掻き立て、維織を呼ぶ声が大きくなった。
莎菜の家の向かいから林の中に入り、奥深く進むのではなく、方向的には神社の方に向かっていた。
子供の頃夏休みに、よく智喜と遊び回っていたことから、ある程度の地理感はあった。それに横井のじいちゃんからも林の中の目印を教えてもらっていたことが、生きていた。
それでも口うるさく言われたことは――
「――これ以上奥に行ったらあかん。帰ってこれんくなるで」
林業を生業にしていたじいちゃんの仕事場。切り株がたくさんある場所から奥には、行ったことがない。
きっとそれは言葉通りで――じいちゃんでさえ奥に入ってしまえば、迷ってしまうと言うことだったのだろう。
だからこそ。維織には、その手前まででいて欲しい。
そう願いながら、懐中電灯を左から右に振った時。灯りの線の中に、何かが映った。
「莎菜」
彼女を呼んでから、何かがあったところに灯りを向ける。
一部木が生えていないエリアにいたのは――
幼稚園の服を着たままの、維織だった。
「……維織っ!」
「あ、お姉ちゃん」
こちらに振り返った維織は、こっちの不安とは他所に明るい笑顔を見せる。パッと見た感じも元気そうで怪我もしてなさそうで、よかった……と安堵から力が抜けていった。
莎菜が維織の元に駆け出す。ぎゅっと小さな体に抱き着いた。
「維織! よかった……! 本当によかった……」
お姉ちゃんに抱き締められる維織は、苦しそうにもがく。
「お姉ちゃん離れてよ」
「もう! 勝手にひとりでお外に出ちゃダメでしょ! ママもお姉ちゃんもすごく心配したんだから……」
安心と嬉しさから、莎菜の目に涙が浮かび上がる。そんな姉の気持ちとは裏腹に、ねぇねぇと腕を引っ張った。
「あのね、猫ちゃんがいるの」
「猫?」
しゃがむふたりの上から呟いて、維織の指差す方を照らした。
「維織! 聞こえたら声を出してー!」
ゆっくり進みながら、声を出して探していく。林の中はまだ完全な闇ではなかったが、明かりがなければ足元が分からなくなっていた。もう手を伸ばしたくらいの距離しか目視することも出来ず、捜索は困難な状況だった。
それでも莎菜は止めることなく、ずっと維織の名前を叫び続けた。
「維織ー! 維織ー!!」
夏休みの朝や昼の林の中は、鳥の囀りが聞こえていたり、蝉のやかましい鳴き声があって、怖いと思ったことはなかった。
けれど夜の林の中は不気味な程に、鳥や虫の鳴き声、音が全く聞こえてこない。そんな状況が更に不安を掻き立て、維織を呼ぶ声が大きくなった。
莎菜の家の向かいから林の中に入り、奥深く進むのではなく、方向的には神社の方に向かっていた。
子供の頃夏休みに、よく智喜と遊び回っていたことから、ある程度の地理感はあった。それに横井のじいちゃんからも林の中の目印を教えてもらっていたことが、生きていた。
それでも口うるさく言われたことは――
「――これ以上奥に行ったらあかん。帰ってこれんくなるで」
林業を生業にしていたじいちゃんの仕事場。切り株がたくさんある場所から奥には、行ったことがない。
きっとそれは言葉通りで――じいちゃんでさえ奥に入ってしまえば、迷ってしまうと言うことだったのだろう。
だからこそ。維織には、その手前まででいて欲しい。
そう願いながら、懐中電灯を左から右に振った時。灯りの線の中に、何かが映った。
「莎菜」
彼女を呼んでから、何かがあったところに灯りを向ける。
一部木が生えていないエリアにいたのは――
幼稚園の服を着たままの、維織だった。
「……維織っ!」
「あ、お姉ちゃん」
こちらに振り返った維織は、こっちの不安とは他所に明るい笑顔を見せる。パッと見た感じも元気そうで怪我もしてなさそうで、よかった……と安堵から力が抜けていった。
莎菜が維織の元に駆け出す。ぎゅっと小さな体に抱き着いた。
「維織! よかった……! 本当によかった……」
お姉ちゃんに抱き締められる維織は、苦しそうにもがく。
「お姉ちゃん離れてよ」
「もう! 勝手にひとりでお外に出ちゃダメでしょ! ママもお姉ちゃんもすごく心配したんだから……」
安心と嬉しさから、莎菜の目に涙が浮かび上がる。そんな姉の気持ちとは裏腹に、ねぇねぇと腕を引っ張った。
「あのね、猫ちゃんがいるの」
「猫?」
しゃがむふたりの上から呟いて、維織の指差す方を照らした。

