コトリカゴ

 村一同が参列する葬儀も終わり、次の日からいつも通りの日常が始まった。

 昨日父親の話を出して、母親と何となくの気まずさを感じたが、朝には普段通りで。お弁当を受け取り、いってらっしゃいと見送られて家を出た。

 夜が明けて、父親に対してのもやもやが晴れた訳ではなかった。結局詳細は分からずじまいだし、あれ以上教えてもらえることもないだろう。
 それでも重要な出張であることを知れただけでも良しとして、今はそれで納得することにした。

 父親のことも気掛かりではあるが、それよりも母親の方が気掛かりだったから。

 徳里村の村長、白川正雄(まさお)
 その人の、何らかの標的になり得てしまう状況が心配だった。

 あの人は村の習わしに誰よりも忠実で、誰よりも過剰な反応を見せる――。


 いちいち度を超えて、オーバーなんだよなぁ……。

 ふんぞり返り、バカにするようなしかめっ面をする白川さんを思い出しながら、自分の気持ちを心の中で呟く。
 周りは下校をする人達でがやがやとしていたが、その騒がしさが逆に、何かを考えるにはちょうど良い環境になっていた。
 先に帰りのHRが終わり、昇降口で待っていた俺は、やって来た莎菜の存在に気付いていなかった。

「柊雨君、お待たせ」

 わっ! と飛び付いて驚かせられるが、返ってきた反応は彼女が思っていたものとは違ったらしい。

「あぁ、莎菜。全然待ってないよ」

「……柊雨君。また何か考え事?」

「どうして?」

「だって、反応が薄いんだもん」

 せっかくこっそり近付いたのにーと、ぶぅと口を尖らせる姿に悔しさが見える。何だか悪いことをしたなと苦笑を浮かべると、そっと右手を取られた。

「今日、村に着いたらさ。少しだけ時間ある?」

「うん。大丈夫だよ」

「よかった」

 嬉しそうに莎菜が微笑み、取っていた手が繋がれる。ぎゅっと恋人繋ぎになって、えへへとはにかむ表情が可愛らしく、自然と俺の表情にも笑みが零れた。