コトリカゴ

「え? ゆき兄もう帰るの?」

「あぁ」

 それだけを答えて、煙草を咥える。火を付け煙を吐いたところで、スマホが出された。

「こんなクソな村、二度と戻って来る気ないからさ。ふたりの連絡先教えてよ」

「……え? うん」

 言われた通り智喜がスマホを出し、LINEを交換し合う。次に俺もLINEを交換して、バイクのエンジンが掛けられた。

「何があったか、よく分かってないんだけど……。また、会えるよね……?」

「会えるに決まってるだろ? ほんと、智喜は可愛いヤツだな」

 智喜の頭をくしゃくしゃと撫で回して、ゆき兄がははと笑う。その手が今度、俺の肩にぽんと乗った。

「何か困ったことがあったら、いつでも連絡してこいよ。莎菜ちゃんの相談とかでもいいからさ」

「うん。ありがとう」

 俺達のことを交互に見てから、煙草をひと吸いする。それからブンとスロットルが回された。

「じゃあな」

 笑顔で。でもあっさりと。
 ゆき兄は去っていく。

 運転するバイクはあっと言う間に見えなくなって、しんとした静けさだけが訪れた。