コトリカゴ

 ――懐疑的な目。不信感を抱いた目。

 ゆき兄からそんな目を向けられたことは、これまで一度もなくて――動揺や戸惑いから固まってしまう。

 そこに突然服の裾を引っ張られ、我に返る。左に顔を向けると、維織がいた。

「柊雨兄ちゃん。ご飯食べたら遊ぼう」

「こら、維織」

 俺達の会話の邪魔をしたと、急いで莎菜がやって来る。維織の手を取り、こっちにおいでと言った。

「柊雨君、ごめんね」

「ううん」

「柊雨、遊んでやりな。俺、煙草吸ってる来るわ」

「分かった。ゆき兄ありがとう」

 いいよと言う代わりに手を上げ、居間を出て行く。庭に出て火を付ける姿が、ここから見えた。

「ごめんね。大丈夫だった?」

 心配そうに訊ねる莎菜に、うんと微笑む。

「大丈夫だよ」

「それならよかった。何だか込み入った話してそうだったから」

「ちょうど終わったところだったよ」

 気を遣わせない返事をして、維織の方を向いた。

「何して遊ぶ?」

「えっとねー。かくれんぼ!」

「かくれんぼはちょっと危ないかな。まだ人がいっぱいいるし。外に行く?」

「うん! それなら虫探ししたい」

「いいよ」

 お姉ちゃんも行こーと、3人で外に出る。維織のお目当てのてんとう虫とバッタ探しが始まってしばらくして、庭に2台の車が入ってきた。

「いやー、阿切さんお疲れ様でした。お腹空きましたやろ? ささ、食べましょう」

 助手席から出てきた白川さんが、車を運転していた阿切さんに言う。
 どうやら火葬場での焼きが終わり、一旦帰ってきたようだ。

 もう1台の車から横井の息子さんが降り、ばあちゃんの手を取って、娘さんも降りてきた。

「おふたり共ありがとうございました。後は私らで済ませますので、今日はお昼を食べて行って下さい」

「大蔵さんもお勤め、お疲れ様でしたね。また墓入れなどの時は声掛けて下さい」

「はい。ありがとうございます」

 息子さんが阿切さんに頭を下げる。
 一足早く歩き出していた白川さんが、庭にいたゆき兄の姿を見付けた。途端不愉快な顔をして、つかつかと詰め寄って行く。

「こら誰かと思たら。柿木のとこの裏切り息子やないか」

 何とも嫌味な言い方をして、相手のことを呼ぶ。しゃがんで煙草を吸っていたゆき兄は、黙って白川さんのことを見上げた。

 変な空気が流れ、ふたりの間を紫煙がゆらゆらと立ち昇る。