コトリカゴ

「昔、何があったかは知らねーけど。今時どうかと思うね。よそ者は嫌いって言う風習」

 一通り食べ終えたゆき兄が、呆れたように言う。

「この村を存続させたいわりには、よそ者は来んなって。矛盾してね?」

「それは確かに」

「だろ? それに村のことや村の習わしに異常なのも、おかしいと思うしな。ジジババ共は、もうその感覚が麻痺しちまってるし。これ以上関わりたくなくて、だから俺は早々に出ていった訳だけど」

「ゆき兄は白川さんが嫌いだからだと思ったよ」

「それは当然だろ。何なら第一理由だわ」

 そう言えば、智喜はやっぱりと笑う。
 そこに智喜のお父さんがやって来た。

「智喜。ちょっと手伝え。白川さん達が戻ってくる前に、祭壇回り片付けるぞ」

「へ~い」

 渋々返事をして、行ってくると智喜が立つ。
 ふたりになってゆき兄は、何故かじーっと俺のことを見てきた。

「何か付いてる?」

「いーや」

 そう言っても、視線が外れることはない。穴が開く程見つめられて戸惑っていると、ようやく話し掛けられた。

「柊雨はさ。この村の言い伝え、知ってる?」

「言い伝え? いや、知らないよ」

 そんなものがあったんだと思うくらいには、初めて聞いた話だった。

「そっか」

 でもゆき兄はそう言うだけで、言い伝えについて話そうとはしなかった。
 変わらず、じっと見つめられる。

「柊雨さ。おとついの夜、横井の家にいたよな?」

「え? いたよ。じいちゃんが危ないって聞いて、顔を見に」

「その時。何かなかったか?」

 まさかの質問に、一瞬言葉が詰まった。

 ……話して。いいのか……?

 一度智喜に話そうとしたが、話すことを止めた。
 それはあまりに現実離れしていて。あまりに信じ難い内容だったから。

 嘘だと笑われたとしても、もしかしたら何か危険が及ぶかも知れない。それなら話さない方がいいと、胸にしまった。

 それを。ゆき兄には話をしていいのか?
 でもゆき兄は、何かを知っているような感じもある――。


 若干の時間、思考する。
 俺が出した答えは、こうだった。

「いや、何もなかったよ」

 僅かな会話の途切れ。驚きに思わず目を見開いてしまっていただろうが、それでも秘匿を選んだ。

 出来るだけ何事もなかったように答えると、ゆき兄はふっと笑う。

「そっかそっか」

 言って、置いていた箸を手に取ると、目の前の大皿に乗る唐揚げをグサッと突き刺した。勢いよく刺さった反動で、ゴンと皿が音を立てる。
 刺した唐揚げをひと口かじって、ゆき兄は口を開いた。

「俺、お前のこと疑ってるから。何か知ってるって」