コトリカゴ

 カレーを乗せたお盆と天ぷらの皿を持って、居間に戻ってくる。俺達側ではない机の上に皿を置いて、智喜の隣に座った。

 夜と比べて品数が少なくなったと言っても、大皿の数はそれなりにある。ポテトサラダとイカリングフライを取って、手を合わせた。

「いただきます」

 莎菜は今日も、家族4人で集まって食べていた。お父さんがいたからか、維織がぐずることもなく、口にケチャップを付けてオムライスを食べている。

 莎菜も昨夜のように落ち込んだ様子もなく――横目で見て、よかったと思った。


 俺達3人の会話は、もっぱらゆき兄のことだった。

「ゆき兄、そっちはどんな感じ?」

「めっっちゃ快適。都会に慣れたら、こんなクソ田舎、戻れねーよ」

「ははは。クソ田舎。でもいいなぁ」

「智喜もこっち来いよ。高校卒業したら出るだろ?」

「うーん。そうなるだろうなとは思ってるけど。今は何とも」

「あ、一応は考えてるんだな」

「うん。バスケで推薦……は無理だろうけど。行きたいなって思ってる大学は、とてもここからじゃ通えなさそうだから」

「なるほどねー」

 ぱくっとコロッケを口に入れて、今度こっちに話題が振られる。

「柊雨は?」

「村を出るってこと?」

「そう」

「うーん」

 俺は煮え切らない返事をして、お茶を飲んだ。

「出たい、とは思う。でも莎菜、彼女次第かな、とも思ってる」

「彼女はここに残るん?」

「いや、そこまでの話はしてないから分からない。でも莎菜達は引っ越しして来たばかりだし、家族的にはずっと住むと思う。そうなると、莎菜は家族を放って出ていくとは考えられなくて」

「彼女が残るなら、柊雨も残りたいって訳か」

「うん。莎菜をひとりにしたくない」

 そう言うと、ゆき兄と智喜のかぁー! と言う声が重なった。

「あーあー。ラブラブで見ちゃいられないね~」

「そう言ってやるな、智喜。柊雨は大人になったんだ」

 智喜の肩に手を乗せ、ゆき兄がふるふると首を振る。ふたりの芝居を見ながら、いやいやと言った。

「やましい意味じゃないよ。ふたりなら分かるだろ? この村がよそ者に対して排他的だってこと」

 慌てて言えば、智喜が苦笑を浮かべる。

「分かってるよ。莎菜ちゃん、って言うか、池田家を放っておけないよな」

「あー。ハゲ狸ね」

 狸親父からハゲ狸に昇格したことに、苦笑いしてしまう。でも伝えたいことは、ふたりが思っている通りのことだった。