コトリカゴ

「柊雨~。追加でポテト揚げようと思うんだけど、まだ食べるだろ? って――」

 外に出てきた智喜がこっちを見て、え? と目を丸くさせる。

「……ゆき兄!?」

「智喜、久し振り~」

 ひらひら手を振るゆき兄に、智喜が駆け寄ってきた。

「え? 帰ってきてたの? いつ? 教えてよ!」

「いやー悪いね。昨日から帰ってはきてたけど、葬儀出んの面倒くせぇなぁって思っててさ」

 質問に答える形で、ふたりはわいわいと話に花が咲く。

 俺もお兄ちゃんと慕っていたが、智喜はそれ以上にゆき兄のことを慕っていた。今でも憧れの存在となっていることから、今日の再会はとても嬉しいだろうなと思う。

「ゆき兄も一緒にご飯食べようよ」

「いやいや。通夜に出なかった奴が、ご飯だけ食べに中に入ってみ? なーに言われるか分かったもんじゃないべ?」

「それは確かに」

「だろ? だから今日は帰るわ。葬式は出る予定だから、また明日な」

「うん。また明日」

 帰っていく背中に、智喜が大きく手を振る。見えなくなるのはあっと言う間で、それからくるりとこっちを向いた。

「で。ポテト食べるだろ?」

「あぁ。食べるよ」

「莎菜ちゃんも食べる?」

「うん」

「そうこなくっちゃ。じゃあ揚げてくるから、すぐ戻ってこいよ」

 歩き出した智喜に、分かったと答える。家の中に入っていくのを見届けてから、隣に立つ莎菜の方を向いた。

「何か話が途中で終わっちゃったけど……。気持ち的には落ち着いた?」

「うん」

「それならよかった」

 向けられた笑顔はさっきと違って、明るさが戻っている。だから安心して自然と、俺の顔に笑顔が浮かんだ。

「じゃあ戻ろっか。智喜の揚げたてポテトでも頂こう」

「そうだね。でもその前に――」

 そう言ってそっと。莎菜が抱き着いてきた。

「柊雨君、ありがとう」

 その言葉が嬉しくて、俺も抱き締め返す。

「いいえ。また辛くなったりしたらすぐ言って? 俺が出来ることなら何でもするから」

「うん。本当にありがとう」

 しばらくお互いの温もりを感じ合って、どちらともなく離れる。顔を見合って、ふたりで微笑んだ。

「柊雨君。大好き」

 気持ちが高ぶって、彼女の顔に自分の顔を近付ける。

「俺も。大好きだよ」

 少し長めのキスを交わして、虫の音に混じってちゅっと音が鳴る。頬に添えていた手を下ろして莎菜の手を握り、今度こそ家に戻って歩き出した。