コトリカゴ

 お互いの紹介が終わったが、ゆき兄だけはんー? と眉を寄せ、訝しい表情を見せている。

「って言うか、池田って……いたっけ?」

 こんな可愛い子いたら、忘れる訳ないけどなぁと言うので、少し説明を付け加える。

「ゆき兄は知らなくて当然だと思うよ。ゆき兄が村を出てから、こっちに来たから」

「だよなぁ、って。移住して来たん!? よくあの狸親父がOK出したな」

 驚きと共に、はぁーと感心している。それに対しては苦笑いを返した。

 莎菜が狸親父って? と訊いてきたので、白川さんのことと教えておく。


「いつ帰ってきたの?」

「帰ってきたのは昨日の夜かなー。なーんか横井のじいちゃんが亡くなったから、帰ってこいとか電話があったけどさー。実際俺、そんな関わりなかったし、参列するつもりはなかったんだけど。行かなかったら行かなかったでうるせーからさぁ。あんたも一応村の人間なんだから、来なかったらこっちが後々面倒になるとか何とか言われてさ」

 あーあと面倒くさそうにぼやいて、煙草を吸う。

「でも通夜にいた?」

「いや、行ってない。面倒くせーなぁ、どうしようかなぁって考えてたら寝ちゃっててさ。さっき起きたとこ」

「そうだったんだ」

「で、一応来たんだけど。もう葬儀は終わってそうだったから、煙草だけ吸って帰るかーって思ってたら柊雨達が来て、イチャ付き出すんだもんなー」

 にやりと意地悪い笑いをされる。莎菜が恥ずかしそうに俯いたので、いやいやと否定した。

「さっきのはそう言うんじゃないんだよ」

「分かってるって。外から来た人間がこの村で、嫌な思いをしない訳がないからな」

 何かを悟った言い方は、妙な説得力があった。
 ここでそう言えばと。ゆき兄が村を出ていった理由のひとつとして、この村に嫌気が差したからと言っていたことを思い出した。

 ふぅーと煙が漂って、ん? と疑問が湧く。

「俺達の話、聞いてた?」

 もしかして……と訊ねれば、ゆき兄はてへと舌を出した。

「そりゃああんな近くにいたらなー。悪気はなかったぞ?」

「そうだよね……」

 仕方ないと思いながら、ふたりだけだと思っていただけに恥ずかしくなる。

 煙草の火が消え、携帯灰皿に入れられた時。おーいと呼ぶ声が聞こえてきた。