コトリカゴ

 居間に長い机が置かれ、そこに母親達村の女の人が作ってくれたご飯が、いくつも並べられる。大皿には揚げ物や煮物、刺身やサラダが乗り、それぞれがそれぞれの場所に座り、夕ご飯を共にしていた。

 まだじいちゃんが眠る棺がある前で、わいわいと騒がしくすることは奇妙な光景ではあったが、これがこの村の葬儀の当たり前だった。

 酒が入った男衆の大きな声と笑い声が響く中、茶碗によそわれたご飯とすまし汁が運ばれる。
 少しではあるが母親の手伝いをしてから、自分の分を持って、莎菜の隣に座った。

「食べてる?」

 ぼんやりとしていた莎菜が声を掛けられたことで、我に返ってうんと答える。

「食べてるよ」

「何か食べたい物はある? 取ってくるよ」

「ううん。今は大丈夫」

 にこりと笑う手元の皿には少量のおかずしかなく、ご飯もすまし汁もほとんど減っていない。それには気付いていたが、分かったと答えた。

 莎菜達は家族4人集まって、ご飯を食べていた。お母さんは維織の世話をしながら、その維織は美味しそうにエビフライを食べている。
 お父さんは食事をしながらもお酒を注ぎに立ったりして、忙しなく動いていた。

 そんな家族の中で、莎菜はぽつんと。ひとり浮いているように見えた。心ここに在らずと言ったような、思いに馳せていると言ったようで、食べる手は全然進んでいない。
 通夜の途中から元気のない彼女のことが、ずっと気掛かりだった。

 口に入れたサラダを飲み込み、すまし汁をすすってから箸を置く。

「外に出る?」

 喧騒に混じって小さい声で訊ねてみると、こくりと静かに頷かれた。

「行こう」

 手を差し出し、立ち上がる。

 俺達がいなくなっても気付かれないだろう騒がしい中。ふたりで家の外に出た。