まさか突然標的が母親になるとは思わず、驚きに目を向ける。
母親は何か思い当たることがあるのか。困った顔で白川さんから目を逸らし、きゅっと口を結んで何も言い返さなかった。
白川さんだけでなく、ここに集まる人――村の全員の視線が、母親に向けられる。
重い沈黙が流れ、罵り顔の白川さんが更に詰めようと口を開き掛けたところで、バリンと何かが割れた音がした。
「キャッ!」
「何や? 何の音や?」
皆の意識は音のでどころに向き、阿切さんが口を開く。
「御神酒入れが割れたみたいや。拭くもんもらえるか?」
「は、はい」
ハッと我に返った母親が、ここぞとばかりにパッと居間を出ていく。
とりあえず嫌な空気だった流れがなくなり、ほっと安心してから、祭壇の方を見た。
阿切さんが言った通り、小さな白い御神酒入れにヒビが入り、何故か割れている。そこから酒が流れ出て、祭壇を濡らしていた。
台所から雑巾とビニール袋を持って戻ってきた母親が、割れた御神酒入れを片付け始める。
「なんや、不良品やったんか? 大事な葬儀やって言うのに。用意したん誰や!?」
何もせず犯人探しが始まるが、すぐにそれは見付かる。
「私が用意したもんやけど、間違いなく新品でしたよ」
「あ……阿切さんのご用意でしたか……。そうやったら、何で割れたんでしょうなぁ」
阿切さんだと分かるやいなや、白川さんの態度がころっと変わる。責めるなどとんでもないと、同調しながら媚びへつらう。
そんな姿を見て不快感が増す中。ずっと下を向いて俯く莎菜が、気になって仕方なかった。
「ひとまずは終わりましたから、大蔵さん、締めの挨拶してもらえますか?」
「あ、はい。分かりました。ええと、それでは本日は――」
息子さんの挨拶がされ、通夜が終わりを迎える。阿切さんから雑巾を受け取った母親は、一足先に居間を出ていった。
「それでは簡単なものではありますが、夕ご飯を用意しましたので。どうぞ食べていって下さい」
母親は何か思い当たることがあるのか。困った顔で白川さんから目を逸らし、きゅっと口を結んで何も言い返さなかった。
白川さんだけでなく、ここに集まる人――村の全員の視線が、母親に向けられる。
重い沈黙が流れ、罵り顔の白川さんが更に詰めようと口を開き掛けたところで、バリンと何かが割れた音がした。
「キャッ!」
「何や? 何の音や?」
皆の意識は音のでどころに向き、阿切さんが口を開く。
「御神酒入れが割れたみたいや。拭くもんもらえるか?」
「は、はい」
ハッと我に返った母親が、ここぞとばかりにパッと居間を出ていく。
とりあえず嫌な空気だった流れがなくなり、ほっと安心してから、祭壇の方を見た。
阿切さんが言った通り、小さな白い御神酒入れにヒビが入り、何故か割れている。そこから酒が流れ出て、祭壇を濡らしていた。
台所から雑巾とビニール袋を持って戻ってきた母親が、割れた御神酒入れを片付け始める。
「なんや、不良品やったんか? 大事な葬儀やって言うのに。用意したん誰や!?」
何もせず犯人探しが始まるが、すぐにそれは見付かる。
「私が用意したもんやけど、間違いなく新品でしたよ」
「あ……阿切さんのご用意でしたか……。そうやったら、何で割れたんでしょうなぁ」
阿切さんだと分かるやいなや、白川さんの態度がころっと変わる。責めるなどとんでもないと、同調しながら媚びへつらう。
そんな姿を見て不快感が増す中。ずっと下を向いて俯く莎菜が、気になって仕方なかった。
「ひとまずは終わりましたから、大蔵さん、締めの挨拶してもらえますか?」
「あ、はい。分かりました。ええと、それでは本日は――」
息子さんの挨拶がされ、通夜が終わりを迎える。阿切さんから雑巾を受け取った母親は、一足先に居間を出ていった。
「それでは簡単なものではありますが、夕ご飯を用意しましたので。どうぞ食べていって下さい」

