「ううん、ええんよ。それは気にせんといて。むしろ柊雨君を巻き込んでしもて、こっちこそごめんやったで。びっくりしたやろ?」
「はい。それは……」
正直に答えると、娘さんは苦い微笑を浮かべる。
「せやんね。本当にごめんやったで。ああなってしまったら。ううん、病気に罹ってしまった時点で、私達に出来ることは何もないから。お父さんのことは白川さんと阿切さんに任せたから、大丈夫やで」
「そうですか」
気になることがあったがそこには触れず、まずは受け止める。
「お母さんもね、とりあえずはこうして無事やで。本当はすぐにでも病院に連れて行くべきなんやろうけど。お父さんの傍を離れへんのよ。離そうとすると泣いて嫌がってねぇ。だから葬儀が終わってから、行こうと思ってる」
「そうでしたか。何事もないことを願っています」
「せやね。ありがとう。あ、この包帯はその、痕を隠す為やから、周りには内緒にしといてや」
ばあちゃんの首が絞められた事実は、あの場にいた4人しか知らない。知られては色々とまずいだろうことは、何となく分かった。
「分かりました。色々とありがとうございました」
答えて、静かにこの場を去る。
娘さんとの会話中、身じろぎひとつしなかったばあちゃん。大丈夫かな? と言う思いと、本当に後遺症などなければいいなと願いながら、まだ誰も座っていない座布団に座った。
スマホがマナーモードのままであることを確認して、ふぅとひと息吐く。そこに喪服姿の息子さんが、背の低い中年の男性と共に居間に入ってきた。
腹の出た小太りな体型。頭頂部がハゲかかった薄い髪。顔にどことなく嫌味が滲み出るその男性は、白川さん――この村の村長だった。
ふたりは喪主席へと進んでいき、そこで何かを話している。
そんな光景を横目で見てから、考えるのはやはり昨日のことだった。
――昨日の出来事を。この場で知っているのは、たった数人だけ――。
きっと、昨日のことは誰にも話されることはなく、じいちゃんは病気で命を落としたと言うことになるのだろう。
知らないまま、知らされぬまま。
ただ普通に葬儀が始まろうとしているこの状況に、事実を知るひとりとして奇妙さを覚えずにはいられなかった。
「はい。それは……」
正直に答えると、娘さんは苦い微笑を浮かべる。
「せやんね。本当にごめんやったで。ああなってしまったら。ううん、病気に罹ってしまった時点で、私達に出来ることは何もないから。お父さんのことは白川さんと阿切さんに任せたから、大丈夫やで」
「そうですか」
気になることがあったがそこには触れず、まずは受け止める。
「お母さんもね、とりあえずはこうして無事やで。本当はすぐにでも病院に連れて行くべきなんやろうけど。お父さんの傍を離れへんのよ。離そうとすると泣いて嫌がってねぇ。だから葬儀が終わってから、行こうと思ってる」
「そうでしたか。何事もないことを願っています」
「せやね。ありがとう。あ、この包帯はその、痕を隠す為やから、周りには内緒にしといてや」
ばあちゃんの首が絞められた事実は、あの場にいた4人しか知らない。知られては色々とまずいだろうことは、何となく分かった。
「分かりました。色々とありがとうございました」
答えて、静かにこの場を去る。
娘さんとの会話中、身じろぎひとつしなかったばあちゃん。大丈夫かな? と言う思いと、本当に後遺症などなければいいなと願いながら、まだ誰も座っていない座布団に座った。
スマホがマナーモードのままであることを確認して、ふぅとひと息吐く。そこに喪服姿の息子さんが、背の低い中年の男性と共に居間に入ってきた。
腹の出た小太りな体型。頭頂部がハゲかかった薄い髪。顔にどことなく嫌味が滲み出るその男性は、白川さん――この村の村長だった。
ふたりは喪主席へと進んでいき、そこで何かを話している。
そんな光景を横目で見てから、考えるのはやはり昨日のことだった。
――昨日の出来事を。この場で知っているのは、たった数人だけ――。
きっと、昨日のことは誰にも話されることはなく、じいちゃんは病気で命を落としたと言うことになるのだろう。
知らないまま、知らされぬまま。
ただ普通に葬儀が始まろうとしているこの状況に、事実を知るひとりとして奇妙さを覚えずにはいられなかった。

