コトリカゴ

 視界の端で、小屋の中の光が消えた気がした。
 ただリュックを取っている時だったので、確証がない。

 しばらくじっと小屋の方を見つめる。しかし何も起こらないので、気のせいだなと家の中に入った。

 リュックや荷物を置いて、机の上に置いてあった数珠を取る。スマホと一緒にポケットの中に入れて、再び外に出た。

 スタンドを上げ、自転車に乗る。通夜に参列するべく、横井の家に向かった。


 横井家に着くと、もう村のほとんどの人が集まっているようだった。ざわざわとした話し声が、外にまで聞こえていた。
 邪魔にならない場所に自転車を止め、開き切った玄関を通る。

「よっ」

 入ってすぐ。上がり(かまち)を上がったところに、智喜の姿があった。目が合うと、やぁとばかりに手を上げられる。

「ご出席の方は、ここに名前を書いて下さ~い」

「分かった」

 立派に手伝いを務めている智喜に、失礼ながら笑ってしまう。
 簡易的に用意された長机の上にある芳名帳に、名前を記帳した。

「受け付けを任されたんだな」

「そっ。まぁ楽でいいよ。じゃあこの先の居間にどうぞ~」

 ペンを置いたところで、案内をされる。またふっと笑いを零して、ありがとうございますと丁寧に返してから、廊下を進んだ。

 居間と客間を仕切る襖を外し、広い一室となったところに村の皆がいた。一番奥に見事な祭壇が組まれ、じいちゃんの遺影の回りには、これまた豪華に何十本もの菊の花が飾られていた。
 りんごや大根、煎餅菓子が供えられた祭壇前に、棺が置かれている。

 そんな居間の後ろで立ち、ばあちゃんや息子さん達の姿を探す。昨日あの場にいた人間として確認や、黙って帰ったことを謝ろうと思った。

 ふと、喪主席となるところに、ばあちゃんがぽつんと座っていた。元々背の小さい丸まった後ろ姿が、葬儀と言う場で余計により悲しく映る。
 そんなばあちゃんの隣、寄り添うようにして娘さんがいた。

 通夜が始まる前にと、ふたりに近付く。

「こんばんは。芳野です」

 そっと声を掛け、傍に座る。と、娘さんが俺に気付き、あぁと声を出した。

「柊雨君。来てくれたんやね。ありがとうねぇ」

「いえ。あの、この度はお悔やみ申し上げます」

 頭を下げると、ご丁寧にありがとうと言われる。

「あの後は……大丈夫でしたか? 俺、黙って帰ってしまって、すみませんでした。ばあちゃんも体調の方は……?」

 訊ねたかったことを全部訊ねる。
 ちらと様子を伺うと、ばあちゃんはずっと、一点を見つめているだけだった。
 そんなばあちゃんの首には、包帯が巻かれている。