コトリカゴ

 食堂は渡り廊下を渡った先にある為、眺めのいい場所だった。そこまで広くはないが、いつも生徒達で賑わっている。日によっては座れない時もあるくらいで、お弁当持ちの人は利用してはいけない決まりがあった。

 運良く端っこのテーブルにトレイを置き、智喜と向かい合わせに座る。いただきますと手を合わせ、カレーを口に運んだ。

 大体いつもお弁当なので、こうして学食でのお昼は新鮮に感じる。揚げたてのカツを頬張りながら、会話はもっぱら横井のじいちゃんのことだった。


「そう言えば、じいちゃんていつから体調が悪かったんだ?」

「んー。俺も詳しくは知らないなぁ。親父から聞かされたのも一昨日だったし。ほら柊雨に教えたじゃん? それで知ったぐらい」

 付け合わせの福神漬けを食べる智喜から、ボリボリと音が聞こえる。

「隣って言っても、距離はあるし。それに俺部活で朝早ければ、帰って来んのも遅いから。最近じいちゃんの顔を見てないなーなんて言う疑問もなかったしな」

 それは俺も同じだった。小さい頃はよく会っていたが、智喜と遊ばなくなってからは、じいちゃんの家に行くこともなくなり、いつしかすっかり会わなくなってしまった。

 そっかと思いながら、セットで付いているサラダを食べる。すると口の中が空っぽになった智喜から、気になる話が出てきた。

「でもさ、ちょこっと親父が話してたのが聞こえたんだけど。じいちゃんが病気になったのを、誰にも話すなってばあちゃんに口止めしてたらしいんだよね」

「口止め?」

「そうそう。理由までは分かんなかったけど、それで病院に行くことも、医者に診せることもしなくて、病状が悪化したって」

 それを聞いてふと疑問に思っていたことが、腑に落ちる。
 昨日顔を見に行った時、じいちゃんが寝ていた和室を見て思ったこと。薬の存在がなかった理由が、そう言うことだったんだと知る。

 しかしまたどうして口止めをしていたんだ? と言う別の疑問が湧いてしまった。

「じいちゃんて……。病気、だったんだよな?」

 疑念が、ぽつりと口から出る。
 授業を受けて少し忘れ掛けていた昨日の出来事が、一瞬で頭の中に蘇った。

 あれを本当に病気と言うべきなのか……?

 確かに病気なのかも知れない。
 けれど俺には病気ではない、別のものとしか考えられなかった。

 そう。

 あれはまるで――――。



 幽霊に。悪魔に。

 取り憑かれたように。