コトリカゴ

「――柊雨。今日お弁当?」

 この日の午前の授業が終わり、昼休みになる。
 ほぼ毎日お弁当であることを知っているはずの智喜からの、珍しい問い掛けだった。

「いや今日は購買か、食堂に行こうと思ってる」

 そう答えると、智喜がにかっと笑う。

「だと思った。だから食堂行こーぜ」

「うん。いいよ」

 リュックから財布とスマホを取り出して、椅子から立ち上がる。それからふたりで教室を出て、廊下を歩く。

「柊雨んとこのお母さんも、朝から手伝いに行ってんだろ?」

「そうそう。俺と同じくらいに家を出ていったよ」

「やっぱそうだよな。だから今日のお弁当はないだろうなーって思ったんだ」

「正解。智喜んとこは隣だし、ふたり共色々大変そうだよな」

「だなー。親父は昨日の夜から準備やらー、何やらーで行ってるし。母親も1回朝に帰って来たけど、すぐまた出ていったよ」

「小さい村だからだろうけど、誰かが亡くなると一大イベントみたいになるよな」

「とは言え、たまに異常だと思うけどな」

 智喜の率直な意見には、俺も心の中で納得する。

「あーそれに学校終わったらすぐ帰って、俺も手伝いに行かなきゃいけねーし。あ、明日は葬式だから、柊雨も学校休むだろ?」

「あぁ。さすがに行かないって訳にはいかないだろうから」

「じゃあ葬儀終わったら、久々遊ぼうぜ」

「いいよ。何する?」

 バスケに専念するようになってから、智喜と遊ぶのは本当に久し振りだ。葬式後と言う不謹慎さはあるかも知れないが、友人からの誘いは率直に嬉しかった。
 わくわくと。楽しみに思う自分がいる。

「ガキの頃みたいに、外に遊びに行くってのはもうないしな。そうだなー……。新作の格ゲー買ったけどまだやれてなくてさ、それやる?」

「智喜、昔から格ゲー好きだよな」

「何かストレス発散にならね? こう、ボコボコにしてさ。特にコンボが決まって、相手に何をさせずに勝てた時とか、すげー快感なんだけど」

 シュッシュッとシャドーボクシングを交えながら説明をしてくれるので、思わずははと笑う。

「それは人それぞれじゃないか? 俺のストレス発散法は違うし」

「あーそうだな。柊雨の場合は莎菜ちゃんだよなー」

「まぁ、間違いではない」

「はいはい」

 簡単にあしらわれている内に、食堂へと着いた。

 食べ盛り。高校の学食とあって、メニューはどれもリーズナブルで、無料で大盛りにも出来る。
 俺と智喜は揃って、カツカレーの大盛りを頼んだ。