家に帰り着いたが、ゆっくり休みと言われても、休めるはずがなかった。
頭の中にはずっと、横井のじいちゃん家であった出来事が思い出されて――。
答えのない疑問だけが、ぐるぐると回っていた。
――じいちゃんはどうして、あんなことになったんだろう?
阿切さんは ”病“ だと言っていた。
けれどあんな、人が変わってしまうような病があるんだろうか?
だがじいちゃんの体にあったあの模様……。
あれが阿切さんの言う病なんだろうか?
だとしたらどうして、阿切さんが呼ばれた?
阿切さんは神社の神主であって、医者じゃない。
それにお経を呼んだらじいちゃんは苦しみ出したし、お札が燃え出したのを実際に見た。
あれは病じゃない……?
病であって、病とは違う別の――。
「はぁー……。分からん……」
呟いて、目の下まで湯船に浸かる。忘れられないあの光景が頭の中を一巡して、それからお風呂を出た。
バスタオルを肩に掛け、ドライヤーを手に持って居間に向かう。すると片付けをしていたはずの母親が、慌ただしく何かの準備をしていた。
「お風呂出たよ」
この家のお風呂には、追い炊きする機能がない。だからひとりが出たら、すぐに入らないと冷めてしまう。
そう言うこともあり声を掛けると、母親は俺が来るのを待っていたようだった。
「柊雨。さっき横井さんから電話があってね、おじいさん亡くなったって」
「そう、なんだ……」
知っていた。確証は持っていなかったが、そうだろうと。
けれど電話があったことで、それは間違いではなかった。
どう反応していいか分からず、妙に詰まった曖昧な返事をしてしまう。だがその違和感はショックを受けたものだと理解され、母親は寂しそうに眉を下げた。
「小さい頃、よくお世話になっていたものね。でも病気には勝てなかったみたい」
「そうだったんだ」
「それで明日の夕方にお通夜があるって。だから学校から帰ってきたら、横井の家に行ってね」
「うん。分かった」
「数珠とか用意して、机の上に置いておくから。人手が足りないみたいだから、母さんも朝から炊き出しに行くから、家にはほとんどいないかも」
「大丈夫だよ。明日のお昼は何か買うから」
「うん。よろしくね」
にこと微笑んで、居間を出ていく。それを見送ってから、机の前に座った。
「病気、か」
ぽつりと呟いて、コンセントにドライヤーのプラグを差す。髪を乾かしながら、机の上に置かれた香典袋を、ただじっと見つめた。
頭の中にはずっと、横井のじいちゃん家であった出来事が思い出されて――。
答えのない疑問だけが、ぐるぐると回っていた。
――じいちゃんはどうして、あんなことになったんだろう?
阿切さんは ”病“ だと言っていた。
けれどあんな、人が変わってしまうような病があるんだろうか?
だがじいちゃんの体にあったあの模様……。
あれが阿切さんの言う病なんだろうか?
だとしたらどうして、阿切さんが呼ばれた?
阿切さんは神社の神主であって、医者じゃない。
それにお経を呼んだらじいちゃんは苦しみ出したし、お札が燃え出したのを実際に見た。
あれは病じゃない……?
病であって、病とは違う別の――。
「はぁー……。分からん……」
呟いて、目の下まで湯船に浸かる。忘れられないあの光景が頭の中を一巡して、それからお風呂を出た。
バスタオルを肩に掛け、ドライヤーを手に持って居間に向かう。すると片付けをしていたはずの母親が、慌ただしく何かの準備をしていた。
「お風呂出たよ」
この家のお風呂には、追い炊きする機能がない。だからひとりが出たら、すぐに入らないと冷めてしまう。
そう言うこともあり声を掛けると、母親は俺が来るのを待っていたようだった。
「柊雨。さっき横井さんから電話があってね、おじいさん亡くなったって」
「そう、なんだ……」
知っていた。確証は持っていなかったが、そうだろうと。
けれど電話があったことで、それは間違いではなかった。
どう反応していいか分からず、妙に詰まった曖昧な返事をしてしまう。だがその違和感はショックを受けたものだと理解され、母親は寂しそうに眉を下げた。
「小さい頃、よくお世話になっていたものね。でも病気には勝てなかったみたい」
「そうだったんだ」
「それで明日の夕方にお通夜があるって。だから学校から帰ってきたら、横井の家に行ってね」
「うん。分かった」
「数珠とか用意して、机の上に置いておくから。人手が足りないみたいだから、母さんも朝から炊き出しに行くから、家にはほとんどいないかも」
「大丈夫だよ。明日のお昼は何か買うから」
「うん。よろしくね」
にこと微笑んで、居間を出ていく。それを見送ってから、机の前に座った。
「病気、か」
ぽつりと呟いて、コンセントにドライヤーのプラグを差す。髪を乾かしながら、机の上に置かれた香典袋を、ただじっと見つめた。

