コトリカゴ

「グギギ、ギィ……!!」

 まるで獣のような声を出し、じいちゃんは我を忘れてしまっているようだった。いや、我を忘れていると言うより、何か悪魔にでも取り憑かれているように見えた。

 押し倒された形のばあちゃんは為す術なく。逃れようとしているが、もはや押さえ込まれたライオンとうさぎ。

 そんな状況から引き剥がそうと、息子さんが怒鳴りながら背中に回っていた。羽交い締めする格好でどうにかしようとしているが、年寄りとは思えない程の力で、じいちゃんはビクともしない。

 それどころかますますにじいちゃんの力は強まっていき、最初は声を出していたばあちゃんも、徐々に苦悶の息が漏れるだけになった。

 ……これは……どう言う……?

 駆け付けてきたものの、理解が追い付かなくて静止してしまう。

 さっき見た時、顔にはなかったのに……。

 腕にあった模様が、いつの間にかじいちゃんの顔にまであった。
 びっしりと。廃屋の壁を這う蔦のように――。


「こっち来てくれっ!!」

 固まっているだけのところ、急に呼び掛けられ、ビクッと肩が跳ね上がる。

「はよ来いっ!!」

「は、はい!」

 2度目の声に慌てて、そこへ走った。背中側には息子さんがいたので、俺は別のところから。
 とにかく首から手を離さなければと、絞めている手を取った。

「じいちゃん、止めて!」

 手と首の隙間に指を入れようとするが、入らない。それならと手首を掴んで引き剥がそうとするが、全然敵わない。

 これが本当に、歳を取ったお年寄りの力なのか……!?

 そこまで力に自信がある訳ではないが、言っても高校生の青年だ。80代の人に負けるとは思えない。

 それなのに力負けをし、尚且つふたり掛かりだと言うのに、全く歯が立たない。
 息子さんも必死で、俺も手首から指へと変えて対応するも、じいちゃんを止めることが出来ない。

 やがてバタバタともがいていた足が動かなくなり、ばあちゃんは白目を向き始める。

「……っは……。が……っ……」

「ギィィ……!!」

 もうこのままでは……!

 歯を噛み、ありったけの力を振り絞る。と、バタバタと駆け付けてきた娘さんの後、袈裟を着た男の人が姿を現した。