コトリカゴ

「いっぱいもらっちゃったね」

「せっかくだから、莎菜の家で分けようか」

「うん、そうしよう」

 鮮やかな緑色をしたえんどう豆を見ながら、しばらく豆料理が続くなと思う。でも嫌いじゃないので、夕ご飯が楽しみになった。

 野菜のお裾分け、と言うのはよくあることだった。出来過ぎたから食べてとか、美味しく出来たから食べてとか。
 こうした小さい村だからこそ、いわゆる近所付き合いが多い。住民同士の繋がりがあり、コミュニティの強みが、田舎の良さと言ってもいい。

 横井のじいちゃん然り、松原のおばあちゃんのように、村の人達は凄くいい人達で良くしてくれる。

 ――ただ一部を除いて。

 と、村の人達に認めてさえもらえれば――。


 話をしながらだと、あっと言う間に莎菜の家に着いた。自転車を止めて玄関の扉を開ければ、真っ先に維織が飛んでやって来た。

「お姉ちゃん、おかえり~! 柊雨兄ちゃん、見て見て~!」

「ん? どうした?」

 見てと、目の前に出された物に視線を合わせる。それは牛乳パックにヤクルトの容器を、セロテープで貼られていた物だった。

「幼稚園でパトカー作ったんだ」

「そうだったんだ。このヤクルトがランプってこと?」

「うん、そう!」

「ちゃんとパトカーになっててすごいな。かっこいいじゃん」

 褒めるように頭を撫でると、維織はすごく嬉しそうな顔をして笑う。そこに莎菜のお母さんが遅れてやって来た。

「おかえりなさい。あら、その野菜どうしたの?」

「途中で松原のおばあちゃんに会って、もらったの」

「そうだったの。明日にでもお礼に行かなくちゃね」

 玄関の1段高くなった廊下にカゴを置いて、それぞれに野菜を分ける。俺の家の分の袋を持って、それじゃあと立ち上がった。

「お邪魔しました」

「柊雨君、今日もありがとう。気を付けてね」

「はい」

「柊雨兄ちゃん、バイバ~イ」

「またな」

 手を振って、家を出る。俺を見送る為に、莎菜も一緒に出てきた。
 自転車のカゴの中に野菜を入れて、彼女の方に向き直る。

「また明日」

「うん。いつもありがとうね」

 にこりと笑った顔に、自分の顔を近付けていく。自然な流れでお互い目を閉じ、軽くキスを交わした。

「バイバイ」

 顔が離れ、俺を見上げる莎菜は照れた表情を浮かべるも、どこか色気がある。その表情を見る度いつも、堪らなく好きだと言う気持ちが湧き出た。

「バイバイ」

 名残惜しさはあるが、自転車のスタンドを上げる。もう一度またと言って、ペダルを漕ぎ出した。