君の放つアルテミスの矢が、僕の胸を貫いた


 二人して黙り、星を数える。
 いつだって望月はい僕が口を開くまでは自分からは何も訊いてこない。大好きな天体講義は饒舌なのに、探ってこない優しさが心地良かった。
 濃紺の半球はどこにでも星を見つけられた。地上との境、白む天際にも小さな星が輝いていたし、時間が経てば位置も変わる。僕は呟く。
「天体観測っていいもんだな」
「でしょ? 特に360°見渡せる絶好のパノラマだからね、矢川(ここ)はさ。空はこんなに広いんだって教えて貰えるよ」
「本当だな。⋯⋯よく、宇宙の広さを想像すると孤独を感じる、って言うけどさ。⋯⋯世界はここだけじゃないって思うと安心するっていうか」
「分かる。救われるよね。やっぱり私もさ、弟が懐かないわけじゃないし、逆にあの人達に放置されてるとは言え⋯⋯、やっぱり気詰まりなんだよね。家は」
「⋯⋯そう、だよな」
「でもね、天野くんの言うとおり宇宙がこんなに広いんだ、って思えるから平気。こうして目立ってるオリオンもさ、春になれば見えなくなって、夏にはお休みできるんだよ。南半球まで追いかけたら別だけどね」
 おどけて続けた途端、くしゅん、と望月が咳をした。
「やばー、ぶり返すかも」とはにかむ。「万全に双子座流星群を観測する為にも絶対、終業式までに完治させなきゃ」
 僕は走ってきたせいか体がそこまで冷えていなくて、首に巻いていた緑色のマフラーを外し、望月のに重ねて巻いた。
「赤に緑って、クリスマスカラーになってるじゃん。えへへ、リボン結びしちゃお」
「似合ってるよ。子供みたいで」
「今のは褒められたの? おちょくられたの?」
 早く家に帰ろう、と急な土手の斜面を登ろうとする望月の手を取る。手袋を忘れたのを後悔していると、繋がる掌に体温が上がっていく。堤防の天辺に到着すると、望月は僕の手を握ったままもう一度頭上を見上げた。
「ここは私だけの特別なプラネタリウム⋯⋯だったけど、今は、私達だけの、だね?」

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