君の放つアルテミスの矢が、僕の胸を貫いた


 三日間降り続けた雨が、やっと上がった。
 久しぶりに、天体観測できそうだな。
 授業中、窓の外で晴れわたる空を眺めている望月を見ているうちに四限のチャイムが鳴った。
 昼休みになった途端騒がしくなる教室の後ろの方で近藤と弁当を食べていると、
「終業式の日にサッカー部でクリスマス会やらねぇ?」と、黒板前の席を陣取っている米倉達のグループが騒ぎ出す。
「いいじゃん! 決起会兼ねようぜ。あとで太谷に話してさ」
「それなら女子がいた方が盛り上がるだろー」
 佐々木達が食いくと、
「ヨネ達、楽しそうな話してるじゃん。私達もいいよねー? 全力で応援してあげるよー?」
 クラスで目立つ女子達が加勢する。体育祭で面倒くさそうに本番で応援合戦にはしゃいでいたグループだ。他のクラスメイトに丸聞こえなのに至って本人達は気にもしないのか、教室中に会話が響いている。
「アマもちゃんと来いよー。試合前の結束を深める為にもサッカー部全員参加な! いつも付き合い悪ぃんだから」
 しまった。知らぬ間に米倉に視線を合わされたらしい。
「⋯⋯ああ」
 面倒になる位なら参加したほうがマシかと返事したが喉の奥で唸るような声しか出ない。すると、
「米倉くん、それって私も参加していいかな」
 教壇前の席に座る柘植さんが振り返った。
「お? 柘植さん、アマが行くから参加ってことー?! 何、体育祭実行委員同士、やっぱり二人付き合ってんの?!」
「いや、違っ――」
「天野くん、地区大会頑張ってね」
「うわ、熱っーーー!! 何だよラブラブかよ」
 湧き上がった大波を僕一人で抑えるなど無駄だった。ノリだけの女子達に囲まれる柘植さんは冷やかされても否定しようとしない。向かいでサンドイッチを食べ終えた近藤がその様子と僕と交互に窺い、びくびくするように眉毛をさげる。
 僕は静かに窓際に目を逸らした。望月は静かに女子二人と机をくっつけて弁当を食べている。暫くすると席を立ち、
「私、ゴミ捨ててくる」
 我関せずの姿勢を崩さないのは相変わらずだな、と僕が立ち上がる背中から目を逸らそうとした次の瞬間だった。
 セーラー襟を翻しながら振り返る望月の黒髪に、きらりと天使の輪が輝いた。その淡い艶めきが、コクン、と縦に揺れる。僕へと頷いているのだと分かった瞬間、勝手に飛び交う周りの騒音が瞬く間に消えた。
 遠く離れても、黙っていても、僕達は言葉を交わし合っていた。
 数秒も満たない視線の繋がり。まるで見えない線で結ぶ星座みたいだ。
 ⋯⋯早く部活が終ればいいのに。
 今夜はどんな星の講義だろう、と期待する僕の心は静かな海のように凪いでいる。

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