君の放つアルテミスの矢が、僕の胸を貫いた

 体育座りのまま膝をさすっていると、さも当然のように太谷に呼ばれた。
 キャプテン自ら、ミスプレイを連発する僕を指名するなんて。
 ちらりとベンチの顧問を盗み見ると、緩慢な動きでフィールド上の各ペアの動きをチェックするのに夢中な様子だ。キャプテンに全幅の信頼で任せているんだろう。
「ゴール前で躊躇うことが多いだろ。だから、キーパーの俺とで訓練」
 正論すぎて何も言い返せずにいると、すでに太谷はネット前で構えている。慌てて立ち上がり、ゴールエリア前に向かう。
 開始早々、僕の蹴る球はすべて捕らえられた。
 数メートル離れて対峙してみると、太谷のプレッシャーをひしひしと感じる。『矢川中の鉄壁の守り』の称号は大袈裟じゃない、いつの間にこんなに上手くなったのだろう。僕は隙を狙い、フェイントを入れて蹴ってみるも肝心なところで重心が崩れ、しまいには脛でボールを打っていた。僕を笑うように、ボール表面の白と黒の五角形がころころと回転する。
「リラックスして、昔みたいに。アマなら出来るから!」
 太谷は米倉達のように馬鹿にすることは一切無い。本気でそう信じているみたいに明るい励ましに、僕は気持ちを切り替えてゴールラインに戻り、集中する。
「ところで、最近は目の調子はどうなんだ?」
 不意の質問だった。少しだけ声のトーンを落としているのは、周りの耳に入らないよう配慮したのだろう。優しいにもほどがある。
「昔よりは良くなったよ。急に眩しくなったり、暗がりとかは焦点合わせにくいけど」
「そっか、良かった! 何か、こうして向かい合ってると小六の対抗試合を思い出すなー。容赦無かったよな当時のアマは」
「⋯⋯随分と前の話だな」
「そんな昔でもないだろ? それに、隣小の有名ストライカーとのPK対決は俺にとって忘れられない勝負になったよ。だから、あの直後――アマが事故に遭ったって聞いた時は心臓潰された気分だったよ⋯⋯本当、無事で良かった⋯⋯!」
「大袈裟だな」
 苦笑いすると、黒目がちの瞳が真っ直ぐに貫いてくる。
 確かに、あの頃の僕は、サッカーなら誰にも負けない自信に溢れていた――いや、本音を言うなら、調子に乗っていた。
 今よりも身長がニ十センチ以上低かった頃、考えるよりも先に脚が動き、それにボールが吸い寄せられるように操ることが出来た。小学校のサッカークラブではエースと呼ばれ、太谷率いる隣りの小学校を負かすと地元で有名になり、『将来の夢はサッカー選手です』と堂々と自己紹介していた。
 運命が狂ったのは小学六年生の秋だ。
 僕は、クラブ仲間と公園でリフティングを競い合っていた。百回を優に越えた僕はそのままボールを蹴り上げながら友達とダベり歩いていた所を突然、車に突っ込こまれ、宙を飛んだのだ。