君の放つアルテミスの矢が、僕の胸を貫いた


 十二月に入ると、サッカー部は年明けに地区大会を迎えるにあたり練習がより強化された。
 グラウンドの方々でサッカーボールが転がっていく。蹴飛ばされた衝撃で、土埃が立ち昇って視界を遮った。
 今日も一段とキツいな⋯⋯。
 左サイド、黄色いユニフォームの米倉の輪郭がぼやけている。僕はペナルティエリアの手前で右足を振り抜くと、前方のアウトサイドへ向けてパスを押し出す。
 だが、ボールは米倉の数メートル手前で力なく転がり、そのままベンチのパイプ椅子にゴツンと当たって止まった。
 最悪だ。
 ボールと人との距離感が掴めなくなっている。以前なら相手の走る速度や方向も完璧に予測できていたのに、今はグラウンド全体が水に溶けた絵の具のように滲んでいる。
 僕は膝に手を置き、砂を噛むように荒い息を吐き出した。
「おい、アマ! どこ蹴ってんだよ、ヘタクソ!」
 土を激しく蹴立てる音が近付くと、米倉が目の前に仁王立ちしていた。
「悪い、米倉。……見えづらくて」
「はあ? また目のせいかよ! 教室で女子とイチャイチャする元気はあるくせになー」
 刺々しい挑発が返ってきた。
 米倉がここまで露骨に嫌ってくる理由は、単なるパスミスへの不満だけじゃない気がしてならない。
 でも、プレイのミスの言い訳にするのは自分でも卑怯だと思う。
 汗が頬をつたい落ちてくる。吐き捨てるように歪んだ笑みを浮かべる米倉へと頭を下げる。
「すまない。……次は、ちゃんと合わせるから」
「ねーよ、次なんか! クソみたいなパスしか打てないならさっさとベンチ引っ込んでろよ!」
 怒号とともに米倉がボールを蹴り飛ばそうとした次の瞬間、横からすっと人影が割り込んできた。
「やめろ!」
 太谷だ。米倉の肩を軽く叩いて制す。
「米倉、そこまで言わなくていいだろ! それにアマ、大丈夫か? 今日は少し休めよ。な?」
 困ったように眉を寄せ、柔らかい眼差しを僕と米倉に注いできた。
「いや、平気だよ。もう一度⋯⋯」
「アマ、本調子じゃないんだろ? 意地張って無理しなくていい。自己管理もプレイの一貫だよ」
 穏やかな返しに、僕は変化球のシュートを蹴られたように胸を深く抉られた。
 まるで、諦めの悪い子供をあやすような声が耳にこだまする。このサッカー部で、自分がいかに惨めな存在に成り下がったかを突きつけられた気がするのは、被害妄想だろうか。
 太谷に悪気がないからこそ、あからさまな意地悪よりも優しさのほうが響く。
 僕は完全降伏するように両手を挙げた。
「……ごめん、太谷。少し休む」
「オッケー! 回復したら戻れよ!」
 泥のついた膝を両手で払い、グラウンドの隅へ向かって静かに歩き出す。ベンチに座っていた一年生の部員が気を遣うようにスペースを空けられた。

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