Twitter(現X)を通してあなぐまさんと連絡を取り、「ゆめであをプレイしていた人で、失踪した人(連絡が取れなくなった人)について調査をしている」と伝えたところ、文字では伝えきれないということで、Discordを通して通話することになった。以下はその会話の内容である。わかりにくい語彙については、※をつけている。
───────────
以前に発行した合同でつくった同人誌のホームページをご覧になったんですよね。あの、ゆめであの水城くんのやつ。合同誌っていうのは、ひとりのキャラクターとかひとつのテーマについてそれぞれ同人作家が書いて、それを本にまとめるっていうものなんです。私はその主催を、ああ、他のジャンルでですけど、主催を何回かやっていて、だから仲間うちでゆめであでも合同誌をやりたいねってなったときに、主催をやることになったんです。
あのメンバーですか? そうですね、うーん、だいたいがTwitter(現X)で知り合った人たちです。とはいっても、初対面の方はいませんでしたね。以前に別のジャンルで合同誌を作った方とか、何度かイベントでお話しした方だったりとか、グッズ交換をよくする方だったりとか。そういう人ばっかりです。なんていうか、人となりを知っている方しかいませんね。合同誌ってどうしても原稿の締め切りとか、印刷費の関係でお金のやり取りとかをすることがあるので、連絡しやすい人と作ることが多いんです。もちろん、それは私の場合はってことであって、みんながみんなそういうわけではないと思うんですけど。
私からのはなしが聞きたいっていうのは、入相なむるのことですよね? 彼女のことなら、よく知ってますよ。彼女と私はリアルでも友達だったので。……彼女とは、高校のときに文芸部で一緒だったんです。ええ、同級生です。とはいっても、私たちはふたりともただ駄弁ってるだけの部員で、たいして書いたりはしてなかったんですけどね。でも高校を卒業して、大学に入って、当時流行っていた少年漫画にふたりしてハマったことをきっかけに同人誌を作り始めました。それからはふたりとも毎日のように文章を書いているんですから、人生って何が起こるかわからないですよね。彼女との関わりですか? うーん、私は東京の大学に来てからずっと東京で、彼女は地元の女子大に進学したんです。なので大学に行っちゃうと全然関わりがなくなってしまうと思ったんですが、同人誌という繋がりがあったので細々とですが連絡を取り続けました。お互いにそんなに活発な方でもなかったので高校の同級生とも連絡なんかとってなくて。だからかな。私と彼女はふたりとも連絡を絶たないようにするのに、ちょっと必死になっていた節がありました。今、ハマっているアニメとか漫画とか定期的に教え合ったり、同じジャンルにハマれば公式がやっているイベントに行ったり。社会人になっても、それは変わりませんでしたね。
それでそのうち、ゆめであを始めたんです。……私がハマって、彼女にすすめました。それまでは同じキャラクターを好きになることなんてなかったんですけど、初めて同じキャラクターを好きになりました。うーん、推しっていうよりも、いや、私としては推しだったかな。でも彼女は多分ガチ恋でした。ガチ恋ってご存じですか? ああ、そうです。ファンっていうより、本気で恋愛感情を持っちゃうっていう感じです。まあ、そうは言っても、私も彼女と一緒で夢小説を書いていたので、同じ穴の狢って感じなんですけど。私としては、自分じゃないかわいい女の子が推しと恋愛しているっていう光景を想像して楽しんでただけなんですけどね。……なんて。あんまり違いはわからないですよね。ですよね。でも、彼女はゲームの楽しみ方から違いました。ああいう女性向けの乙女ゲームって、ヒロインの名前を自分で設定できることが多いんです。あー、たまに、えーっとブレマイ[※1]みたいにきょうだいが出てくると苗字が固定になったりする場合もあるんですけど、だいたいがフルネームを変えられるんです。そういうのを考えるのが面倒な人のためにデフォルトネームっていうのもあって、私はだいたいデフォルトネームでプレイしています。でも没入感が得られたりするので、自分の好きな名前にしたりする人も多いんです。彼女は、自分の名前にしていました。ええ、本名です。あー、ストーリーの中の名前とユーザー名は別に設定ができるので、他のプレイヤーからは見えないようになってるんですよ。他のゲームでもそういうのはよく取り入れられていますね。ゆめであも例にもれず、そういう設定のあるゲームでした。
いや、別に悪いって言っているわけじゃないです。そういう楽しみ方をしてね、っていうのが運営の意図だと思いますし、そもそも乙女ゲームってそういうものですし。でも珍しいなって思ったんです。彼女は私と同じような楽しみ方をする子でしたから。まあ、それなりの時間、離れて過ごしていますし、趣味嗜好が変わることなんて、よくあります。ただ珍しいなと思いました。彼女はずっと線引きが上手な子でしたから。高校時代、彼女のクラスには少し芸能活動をしているような子がいたんですけど、その子たちとも上手くかかわっていて。その印象が強かったので、ちょっと不思議に思ったんです。熱量も異常でしたし。
あー、で、合同誌のときのことですよね。仲間内で合同誌を作ろうってことになって、彼女を誘いました。合同誌の場合、原稿はひとつでも多い方が盛り上がりますから、私が声を掛けたんです。そうしたらすぐにOKって返ってきて、「今から書くね!」ってLINEもくれました。原稿は、多分一番はやいくらいの勢いでくれたんじゃないかな。ただ誤字とか表記ゆれとかがあったので、それを直してって返したんです。私の方で勝手に直すのはよくないですから。でもそれからうんともすんとも言わなくなっちゃって。連絡が返ってこなくなったんです。はい。なので、ああいうお知らせを出しました。彼女がずっと地元に住んでいることは知っていたので、様子を見に行こうかなと思ったんです。でも仕事が忙しくてそうもいかなくて。うちは両親もすでに別の所に引っ越していて、もうあの場所にはいませんでしたし、見に行ってってお願いできる友人もいなくて。こういうときに困るなって思いながら、イベントの後に出来上がった同人誌を持って、彼女の家に行きました。
そうしたら、もぬけの殻だったんです。というより、もうその部屋には他の住人が住んでいました。
あれ、と思って、近くに住んでる彼女の実家に行ったら、彼女のお母さんから「彼のところに行ってくるって、仕事もやめて、家も解約していなくなっちゃたの」って言われたんですよ。彼氏なんていたんだなって思ってると、お母さんから「でも彼氏なんて、いたのかなぁ。そんな素振りなかったけど」って続けられて。変なことに巻き込まれたんじゃないかって思ったんですけど、実家には居場所を一応、連絡していたみたいで。住所ですか? ええ、聞きました。██県██市██[※2]というところです。
でも、そこってなんか山の中みたいなところなんですよね。どうしたんだろうって思ってはいるんですけど……。彼女の家族ですか? あー、実はお母さんとは言ったんですけど、義理なんですよ。彼女が中学生くらいのときにお父さんが再婚してるらしくて。お父さんは既に亡くなっていますし。だからあんまり心配って感じではないみたいで。お母さんには実の娘もいましたし、あとそれに、彼女には新しい旦那さんもいて。まあ、うん、複雑ですよね。だから正直、あのお母さんに嘘を言われたんじゃないかなって思ってるんです。彼女――ああ、ややこしくなってきましたね、なむるは、別のところにいるんじゃないかなって。
とはいっても、私も彼女とすっごい仲が良かったっていうわけじゃないし、それに何かを相談してもらってたわけでも、もし本当に彼氏のところに行ったのだとしたら結婚式にだって呼ばれない関係ですからね。なんとも言えないですね。私もきっと彼女に線を引かれていた側の人間なわけなので。うーん、私としては友だちだと思ってましたし、今でも思ってますけど、もしかしたら彼女からしたら体の良いオタク仲間みたいな感じだったのかなぁって思っちゃいますね。それなのに、よく住所を憶えてましたねって………。本当は探そうと思ってたんです。彼女のことを。だからずっと、忘れないように書いてあるんですよ。でも、だめですね。やっぱり、彼女にとって私はどうでも良い存在なのかなぁってことばかり思っちゃって、それ以上、すすめないんですよ。一回、検索したきりです。それだけ。それ以外は何もできてません。
あー……すみません、愚痴みたいになっちゃって。え、あー例の合同誌ですか? 多分、在庫はまだあったと思います。え? ああ、はい。まだBOOTH[※3]から買えますよ。え、買って下さるんですか? 嬉しいですね。ゆめであはリリース終わっちゃって、もう知ってる人も少なくなってきちゃってるので、ええ、ぜひ楽しんでください。
───────────────
※1 ブレマイ:ブレイクマイケースの略。株式会社colyが手掛ける2024年5月9日リリースの女性向けスマートフォン用アプリゲーム。ゲーム内容の軸にあるのは「代行」。主人公の苗字は弥代に固定されている(主人公には兄がいる)。
※2 実際に存在する場所であるため伏せた。
※3 BOOTH:pixivが提供する、クリエイターが作品やグッズを販売・購入できるオンラインマーケットプレイスのこと。
───────────
以前に発行した合同でつくった同人誌のホームページをご覧になったんですよね。あの、ゆめであの水城くんのやつ。合同誌っていうのは、ひとりのキャラクターとかひとつのテーマについてそれぞれ同人作家が書いて、それを本にまとめるっていうものなんです。私はその主催を、ああ、他のジャンルでですけど、主催を何回かやっていて、だから仲間うちでゆめであでも合同誌をやりたいねってなったときに、主催をやることになったんです。
あのメンバーですか? そうですね、うーん、だいたいがTwitter(現X)で知り合った人たちです。とはいっても、初対面の方はいませんでしたね。以前に別のジャンルで合同誌を作った方とか、何度かイベントでお話しした方だったりとか、グッズ交換をよくする方だったりとか。そういう人ばっかりです。なんていうか、人となりを知っている方しかいませんね。合同誌ってどうしても原稿の締め切りとか、印刷費の関係でお金のやり取りとかをすることがあるので、連絡しやすい人と作ることが多いんです。もちろん、それは私の場合はってことであって、みんながみんなそういうわけではないと思うんですけど。
私からのはなしが聞きたいっていうのは、入相なむるのことですよね? 彼女のことなら、よく知ってますよ。彼女と私はリアルでも友達だったので。……彼女とは、高校のときに文芸部で一緒だったんです。ええ、同級生です。とはいっても、私たちはふたりともただ駄弁ってるだけの部員で、たいして書いたりはしてなかったんですけどね。でも高校を卒業して、大学に入って、当時流行っていた少年漫画にふたりしてハマったことをきっかけに同人誌を作り始めました。それからはふたりとも毎日のように文章を書いているんですから、人生って何が起こるかわからないですよね。彼女との関わりですか? うーん、私は東京の大学に来てからずっと東京で、彼女は地元の女子大に進学したんです。なので大学に行っちゃうと全然関わりがなくなってしまうと思ったんですが、同人誌という繋がりがあったので細々とですが連絡を取り続けました。お互いにそんなに活発な方でもなかったので高校の同級生とも連絡なんかとってなくて。だからかな。私と彼女はふたりとも連絡を絶たないようにするのに、ちょっと必死になっていた節がありました。今、ハマっているアニメとか漫画とか定期的に教え合ったり、同じジャンルにハマれば公式がやっているイベントに行ったり。社会人になっても、それは変わりませんでしたね。
それでそのうち、ゆめであを始めたんです。……私がハマって、彼女にすすめました。それまでは同じキャラクターを好きになることなんてなかったんですけど、初めて同じキャラクターを好きになりました。うーん、推しっていうよりも、いや、私としては推しだったかな。でも彼女は多分ガチ恋でした。ガチ恋ってご存じですか? ああ、そうです。ファンっていうより、本気で恋愛感情を持っちゃうっていう感じです。まあ、そうは言っても、私も彼女と一緒で夢小説を書いていたので、同じ穴の狢って感じなんですけど。私としては、自分じゃないかわいい女の子が推しと恋愛しているっていう光景を想像して楽しんでただけなんですけどね。……なんて。あんまり違いはわからないですよね。ですよね。でも、彼女はゲームの楽しみ方から違いました。ああいう女性向けの乙女ゲームって、ヒロインの名前を自分で設定できることが多いんです。あー、たまに、えーっとブレマイ[※1]みたいにきょうだいが出てくると苗字が固定になったりする場合もあるんですけど、だいたいがフルネームを変えられるんです。そういうのを考えるのが面倒な人のためにデフォルトネームっていうのもあって、私はだいたいデフォルトネームでプレイしています。でも没入感が得られたりするので、自分の好きな名前にしたりする人も多いんです。彼女は、自分の名前にしていました。ええ、本名です。あー、ストーリーの中の名前とユーザー名は別に設定ができるので、他のプレイヤーからは見えないようになってるんですよ。他のゲームでもそういうのはよく取り入れられていますね。ゆめであも例にもれず、そういう設定のあるゲームでした。
いや、別に悪いって言っているわけじゃないです。そういう楽しみ方をしてね、っていうのが運営の意図だと思いますし、そもそも乙女ゲームってそういうものですし。でも珍しいなって思ったんです。彼女は私と同じような楽しみ方をする子でしたから。まあ、それなりの時間、離れて過ごしていますし、趣味嗜好が変わることなんて、よくあります。ただ珍しいなと思いました。彼女はずっと線引きが上手な子でしたから。高校時代、彼女のクラスには少し芸能活動をしているような子がいたんですけど、その子たちとも上手くかかわっていて。その印象が強かったので、ちょっと不思議に思ったんです。熱量も異常でしたし。
あー、で、合同誌のときのことですよね。仲間内で合同誌を作ろうってことになって、彼女を誘いました。合同誌の場合、原稿はひとつでも多い方が盛り上がりますから、私が声を掛けたんです。そうしたらすぐにOKって返ってきて、「今から書くね!」ってLINEもくれました。原稿は、多分一番はやいくらいの勢いでくれたんじゃないかな。ただ誤字とか表記ゆれとかがあったので、それを直してって返したんです。私の方で勝手に直すのはよくないですから。でもそれからうんともすんとも言わなくなっちゃって。連絡が返ってこなくなったんです。はい。なので、ああいうお知らせを出しました。彼女がずっと地元に住んでいることは知っていたので、様子を見に行こうかなと思ったんです。でも仕事が忙しくてそうもいかなくて。うちは両親もすでに別の所に引っ越していて、もうあの場所にはいませんでしたし、見に行ってってお願いできる友人もいなくて。こういうときに困るなって思いながら、イベントの後に出来上がった同人誌を持って、彼女の家に行きました。
そうしたら、もぬけの殻だったんです。というより、もうその部屋には他の住人が住んでいました。
あれ、と思って、近くに住んでる彼女の実家に行ったら、彼女のお母さんから「彼のところに行ってくるって、仕事もやめて、家も解約していなくなっちゃたの」って言われたんですよ。彼氏なんていたんだなって思ってると、お母さんから「でも彼氏なんて、いたのかなぁ。そんな素振りなかったけど」って続けられて。変なことに巻き込まれたんじゃないかって思ったんですけど、実家には居場所を一応、連絡していたみたいで。住所ですか? ええ、聞きました。██県██市██[※2]というところです。
でも、そこってなんか山の中みたいなところなんですよね。どうしたんだろうって思ってはいるんですけど……。彼女の家族ですか? あー、実はお母さんとは言ったんですけど、義理なんですよ。彼女が中学生くらいのときにお父さんが再婚してるらしくて。お父さんは既に亡くなっていますし。だからあんまり心配って感じではないみたいで。お母さんには実の娘もいましたし、あとそれに、彼女には新しい旦那さんもいて。まあ、うん、複雑ですよね。だから正直、あのお母さんに嘘を言われたんじゃないかなって思ってるんです。彼女――ああ、ややこしくなってきましたね、なむるは、別のところにいるんじゃないかなって。
とはいっても、私も彼女とすっごい仲が良かったっていうわけじゃないし、それに何かを相談してもらってたわけでも、もし本当に彼氏のところに行ったのだとしたら結婚式にだって呼ばれない関係ですからね。なんとも言えないですね。私もきっと彼女に線を引かれていた側の人間なわけなので。うーん、私としては友だちだと思ってましたし、今でも思ってますけど、もしかしたら彼女からしたら体の良いオタク仲間みたいな感じだったのかなぁって思っちゃいますね。それなのに、よく住所を憶えてましたねって………。本当は探そうと思ってたんです。彼女のことを。だからずっと、忘れないように書いてあるんですよ。でも、だめですね。やっぱり、彼女にとって私はどうでも良い存在なのかなぁってことばかり思っちゃって、それ以上、すすめないんですよ。一回、検索したきりです。それだけ。それ以外は何もできてません。
あー……すみません、愚痴みたいになっちゃって。え、あー例の合同誌ですか? 多分、在庫はまだあったと思います。え? ああ、はい。まだBOOTH[※3]から買えますよ。え、買って下さるんですか? 嬉しいですね。ゆめであはリリース終わっちゃって、もう知ってる人も少なくなってきちゃってるので、ええ、ぜひ楽しんでください。
───────────────
※1 ブレマイ:ブレイクマイケースの略。株式会社colyが手掛ける2024年5月9日リリースの女性向けスマートフォン用アプリゲーム。ゲーム内容の軸にあるのは「代行」。主人公の苗字は弥代に固定されている(主人公には兄がいる)。
※2 実際に存在する場所であるため伏せた。
※3 BOOTH:pixivが提供する、クリエイターが作品やグッズを販売・購入できるオンラインマーケットプレイスのこと。

