丁度その時、都合よく授業が終わり、十分程の休み時間となった。
ゲッカは後ろの扉からこっそり入ると、後ろからそっと花乃に近づいて声をかける。
「あ……ゲッカ」
花乃はビクッと肩を震わすが、その声の主がゲッカだと分かるとホッと息を吐く。
カツイはまたもポーッと花乃を見つめ続けていた。どうやら花乃が好みのタイプらしいと長年の付き合いからトバはすぐにそう思うことができた。あえてカツイに声をかけないことにした。
「紹介するね、花乃。カツイ先輩とトバ先輩」
ゲッカは二人を順に紹介する。花乃はニコッと微笑みながらカツイを見る。
「初めまして。呉林花乃です」
耳まで真っ赤にしながら花乃を見ているカツイに呆れながら、トバは花乃に目を向ける。
「初めまして、準備はできてる?」
「あっ、はい」
そう言って花乃は机の脇にぶら下げてあったカバンを机の上に置くとチャックを開けた。中には細かな雑貨が詰まっていた。
「でも、塾用のカバンに入れられたのは、最小限の雑貨位ですけど……」
「ん、それで大丈夫。じゃあ行こうか。ほら、カツイくんも」
トバがカツイの背中をパシンと叩くと、カツイは我に返って慌ててあたふたする。
ゲッカに手を引かれ扉を出ようとしたハナはピタリと足を止める。そして二人より先に扉を出てしまっていたカツイとトバは振り返る。
「ハナ?」
「あ、でも外にはハナのボディーガードが……」
すると急にカツイの肩が何者かに叩かれれ、うるさそうにカツイが振り返ると、サングラスをかけた体格のいい男が立っていた。
「お前ら。お嬢様をどこに連れて行く気だ」
しかしカツイもトバも、その男に怯む様子はなかった。逆にゲッカの方が急にコソコソ隠れ出すという不思議な行動を取り始めた。
ハナとしっかり手を繋いでいるゲッカをトバは振り返る。
「ゲッカくん、ハナちゃん連れて外に出て」
「え、でも先輩……」
ゲッカは心配そうな顔でトバを見るが、トバは笑顔を返す。
「いいから。家に戻っててもいいし、隠れて見ててもいいよ」
「見る?」
トバは怪しげな笑みを浮かべてカツイを見る。
「カツイくんがあの人達片付けるところ」
「……いい加減さあ、離してくんない?」
カツイは顔を上げ、男がカツイの肩に置いている手に自分の手を重ねると、大げさに溜息をついた。
「――その、っ手!!」
男が体勢を整える間もなく体が宙に浮き、カツイの体を飛び越し地面に着地した。それは見事な背負投げ。ゲッカとハナはトバの後ろからその光景を見ていたが、まさにそれは一瞬の出来事だった。カツイの体の何倍もあろうとはいう男が、カツイにひょいと軽く投げ飛ばされてしまったのだ。
「すごい……強いんですね、カツイ先輩」
ハナが感心して言う。トバはくるりと振り返る。
「でもね、あの人の方がカツイくんよりずっと強いと思うよ」
「え?」
ハナはそう答えた。ハナは『あの人』の存在をまだ聞かされていなかったのだ。
相手のあまりにひどい弱さに呆れたのか、がくっと肩を落としながらカツイはトバの元へ戻ってくる。
「いんや〜。オレはお前の方が最強だと思うぞ」
「そお? でもカツイくんの方が僕よりもずっと強いよ」
どっと疲れたカツイにトバはつけ入る隙を与えない笑みを向け、更にカツイの疲れは増す。
(このヤロー……)
こいつにはきっと何を言っても無駄だ。この時カツイは心の底からそう思った。
ゲッカは後ろの扉からこっそり入ると、後ろからそっと花乃に近づいて声をかける。
「あ……ゲッカ」
花乃はビクッと肩を震わすが、その声の主がゲッカだと分かるとホッと息を吐く。
カツイはまたもポーッと花乃を見つめ続けていた。どうやら花乃が好みのタイプらしいと長年の付き合いからトバはすぐにそう思うことができた。あえてカツイに声をかけないことにした。
「紹介するね、花乃。カツイ先輩とトバ先輩」
ゲッカは二人を順に紹介する。花乃はニコッと微笑みながらカツイを見る。
「初めまして。呉林花乃です」
耳まで真っ赤にしながら花乃を見ているカツイに呆れながら、トバは花乃に目を向ける。
「初めまして、準備はできてる?」
「あっ、はい」
そう言って花乃は机の脇にぶら下げてあったカバンを机の上に置くとチャックを開けた。中には細かな雑貨が詰まっていた。
「でも、塾用のカバンに入れられたのは、最小限の雑貨位ですけど……」
「ん、それで大丈夫。じゃあ行こうか。ほら、カツイくんも」
トバがカツイの背中をパシンと叩くと、カツイは我に返って慌ててあたふたする。
ゲッカに手を引かれ扉を出ようとしたハナはピタリと足を止める。そして二人より先に扉を出てしまっていたカツイとトバは振り返る。
「ハナ?」
「あ、でも外にはハナのボディーガードが……」
すると急にカツイの肩が何者かに叩かれれ、うるさそうにカツイが振り返ると、サングラスをかけた体格のいい男が立っていた。
「お前ら。お嬢様をどこに連れて行く気だ」
しかしカツイもトバも、その男に怯む様子はなかった。逆にゲッカの方が急にコソコソ隠れ出すという不思議な行動を取り始めた。
ハナとしっかり手を繋いでいるゲッカをトバは振り返る。
「ゲッカくん、ハナちゃん連れて外に出て」
「え、でも先輩……」
ゲッカは心配そうな顔でトバを見るが、トバは笑顔を返す。
「いいから。家に戻っててもいいし、隠れて見ててもいいよ」
「見る?」
トバは怪しげな笑みを浮かべてカツイを見る。
「カツイくんがあの人達片付けるところ」
「……いい加減さあ、離してくんない?」
カツイは顔を上げ、男がカツイの肩に置いている手に自分の手を重ねると、大げさに溜息をついた。
「――その、っ手!!」
男が体勢を整える間もなく体が宙に浮き、カツイの体を飛び越し地面に着地した。それは見事な背負投げ。ゲッカとハナはトバの後ろからその光景を見ていたが、まさにそれは一瞬の出来事だった。カツイの体の何倍もあろうとはいう男が、カツイにひょいと軽く投げ飛ばされてしまったのだ。
「すごい……強いんですね、カツイ先輩」
ハナが感心して言う。トバはくるりと振り返る。
「でもね、あの人の方がカツイくんよりずっと強いと思うよ」
「え?」
ハナはそう答えた。ハナは『あの人』の存在をまだ聞かされていなかったのだ。
相手のあまりにひどい弱さに呆れたのか、がくっと肩を落としながらカツイはトバの元へ戻ってくる。
「いんや〜。オレはお前の方が最強だと思うぞ」
「そお? でもカツイくんの方が僕よりもずっと強いよ」
どっと疲れたカツイにトバはつけ入る隙を与えない笑みを向け、更にカツイの疲れは増す。
(このヤロー……)
こいつにはきっと何を言っても無駄だ。この時カツイは心の底からそう思った。



