カツイとトバは三年生、ゲッカとハナは一年生。正門を過ぎたら別々の教室へと行く事になる。
「先生には注意してね。何かあったらすぐに逃げること。校門にも親が来てないか注意してね」
きっと昨夜ハナが連れ去られた事で、ハナの家は大騒ぎになっていた事だろう。警察が動いていないとも限らない。当然もう学校には知らされているだろう。そこに平然とハナが登校してきたらどうだろう。二年前、トバにも似たような事が起きた。
「オレらのクラスは3-Cだからいつでも来いよ」
最低限の注意をしてから二組は分かれる事にした。
「じゃあな」
「また放課後ね」
なぜか青空をバックにカツイとトバの二人はゲッカとハナに手を振って教室へと向かった。
「ハナ」
「うん」
「調査しなきゃね」
「だね」
「おーっす、カツイ」
教室に入ったカツイに、一人の男子生徒が声をかける。カバンを机に置くと、カツイはその男子生徒の方を向く。
「おーっす」
カバンの中の教科書類を机の中に入れながら、カツイはある事に気づいてトバに声をかける。
「あ、トバぁ。英語の訳やったぁ?」
「五百円」
言うと同時にそう手を出され、カツイはガックリとなる。
「なんだよ。無二の友から金取んの?」
半ば強引に肩に手をかけるカツイを、トバは自嘲して言った。
「無……二? 他に二人といない……友?」
「トバ……?」
「なーんてね、冗談だよ。はいノート。代わりに今日の夕食よろしく」
まだ少しトバの事を凝視し続けているカツイの頭をノートでパタパタと叩いた。
一瞬だけ見せたトバのあの冷たい目――カツイはまだその事が信じられずに呆然と立ち尽くしていた。
カツイがノートに手を伸ばした為、トバはノートから手を放す。しかし全く力は込められていなかったカツイの手からノートはぱたりと落ちる。
「トバ……?」
辺りがざわつく中、トバは黙って席に着く。そんな二人を教室の外から怪しげに見ている二人の生徒がいた。
「見た?」
「うん」
「仲……悪いのかな?」
「さぁ?」
それは不自然なほど教室前で目立っていたゲッカとハナだった。
二人は視線で合図すると立ち上がり、一年生の教室へ向かった。
「ぼくね、昨日の夜『あの人』に会ったんだ」
「昨日、来たの?」
「うん、でも何か会話がね……ちょっとペンだったんだ」
「変?」
丁度その時ゲッカのクラス1-Bに着き、二人はカバンを下ろすと床に座り込んだ。
「『あの人』に何かあるとカツイ先輩が心配して、トバ先輩が風邪ひくと『あの人』が怒られるんだって」
「カツイ先輩が『あの人』を心配するの? カツイ先輩『あの人』嫌ってない?」
二人は新たな疑問を持ち、考え込んだ。
カツイは授業が始まる前に、トバに借りたノートを写していた、その稀な珍しいカツイの目の前にトバが立つ。しかしカツイはノート写しに熱中していて、トバの顔を見る事もできなかった。その真剣な表情が楽しくて、トバはくすりと微笑んだ。
「ねえカツイくん。疑問に思わない?」
「えっ? この訳どっか間違ってるのか?」
トバの質問の意味を取り違えたカツイは慌てて顔を上げる。
「そうじゃなくてゲッカくん」
「ゲッカ?」
トバはニッコリとカツイの机の上に置かれた二人分のノートを閉じた。しかしカツイはそんな事気にしなかった。それほどトバの言葉に聞き入っていたのだった。
「彼、僕らに本名明かしてないじゃない。全然」
「それはっ……! オレ達も同じだろ?」
トバは態とらしく、大きなため息をついた。
「それはそうだけどね、カツイくん。あの人の名字も『呉林』だって知ってた? ハナちゃんとお・ん・な・じ」
カツイは机に手をついて立ち上がる。そしてそれと同時にトバを見た。
「先生には注意してね。何かあったらすぐに逃げること。校門にも親が来てないか注意してね」
きっと昨夜ハナが連れ去られた事で、ハナの家は大騒ぎになっていた事だろう。警察が動いていないとも限らない。当然もう学校には知らされているだろう。そこに平然とハナが登校してきたらどうだろう。二年前、トバにも似たような事が起きた。
「オレらのクラスは3-Cだからいつでも来いよ」
最低限の注意をしてから二組は分かれる事にした。
「じゃあな」
「また放課後ね」
なぜか青空をバックにカツイとトバの二人はゲッカとハナに手を振って教室へと向かった。
「ハナ」
「うん」
「調査しなきゃね」
「だね」
「おーっす、カツイ」
教室に入ったカツイに、一人の男子生徒が声をかける。カバンを机に置くと、カツイはその男子生徒の方を向く。
「おーっす」
カバンの中の教科書類を机の中に入れながら、カツイはある事に気づいてトバに声をかける。
「あ、トバぁ。英語の訳やったぁ?」
「五百円」
言うと同時にそう手を出され、カツイはガックリとなる。
「なんだよ。無二の友から金取んの?」
半ば強引に肩に手をかけるカツイを、トバは自嘲して言った。
「無……二? 他に二人といない……友?」
「トバ……?」
「なーんてね、冗談だよ。はいノート。代わりに今日の夕食よろしく」
まだ少しトバの事を凝視し続けているカツイの頭をノートでパタパタと叩いた。
一瞬だけ見せたトバのあの冷たい目――カツイはまだその事が信じられずに呆然と立ち尽くしていた。
カツイがノートに手を伸ばした為、トバはノートから手を放す。しかし全く力は込められていなかったカツイの手からノートはぱたりと落ちる。
「トバ……?」
辺りがざわつく中、トバは黙って席に着く。そんな二人を教室の外から怪しげに見ている二人の生徒がいた。
「見た?」
「うん」
「仲……悪いのかな?」
「さぁ?」
それは不自然なほど教室前で目立っていたゲッカとハナだった。
二人は視線で合図すると立ち上がり、一年生の教室へ向かった。
「ぼくね、昨日の夜『あの人』に会ったんだ」
「昨日、来たの?」
「うん、でも何か会話がね……ちょっとペンだったんだ」
「変?」
丁度その時ゲッカのクラス1-Bに着き、二人はカバンを下ろすと床に座り込んだ。
「『あの人』に何かあるとカツイ先輩が心配して、トバ先輩が風邪ひくと『あの人』が怒られるんだって」
「カツイ先輩が『あの人』を心配するの? カツイ先輩『あの人』嫌ってない?」
二人は新たな疑問を持ち、考え込んだ。
カツイは授業が始まる前に、トバに借りたノートを写していた、その稀な珍しいカツイの目の前にトバが立つ。しかしカツイはノート写しに熱中していて、トバの顔を見る事もできなかった。その真剣な表情が楽しくて、トバはくすりと微笑んだ。
「ねえカツイくん。疑問に思わない?」
「えっ? この訳どっか間違ってるのか?」
トバの質問の意味を取り違えたカツイは慌てて顔を上げる。
「そうじゃなくてゲッカくん」
「ゲッカ?」
トバはニッコリとカツイの机の上に置かれた二人分のノートを閉じた。しかしカツイはそんな事気にしなかった。それほどトバの言葉に聞き入っていたのだった。
「彼、僕らに本名明かしてないじゃない。全然」
「それはっ……! オレ達も同じだろ?」
トバは態とらしく、大きなため息をついた。
「それはそうだけどね、カツイくん。あの人の名字も『呉林』だって知ってた? ハナちゃんとお・ん・な・じ」
カツイは机に手をついて立ち上がる。そしてそれと同時にトバを見た。



