カツイは立ち上がるとトバの肩に手を乗せ、なぜかトバに顔を近づけると、こつんと額を叩きつけた。
「オレとあんま変わらねーぞ」
「もうっ! 僕じゃなくてミナリくんだよっ」
「あっ……」
なぜか顔を真っ赤にしながら二人を見ていたゲッカとハナ。そして二人はボソッとつぶやく。
「謎だよね」
「うん……」
その夜、ゲッカは扉の開く音で目を覚ました。時計を見ると午前三時。人が訪問するには遅すぎ、また早すぎる時間でもある。
ゲッカがその気配に気づくと同時に、隣のベッドの下段からトバが起き上がった。
「お帰りなさい」
「ええ……」
『あの人』。仮に『彼』と置くとして、『彼』はテーブルにこの家の鍵を置き、ネクタイをゆるめながらカバンを足元に置いた。
「あそこに寝ているのがゲッカくん。向こうの部屋でサクラさんのベッドで寝ているのがハナちゃんです」
『サクラ』。また新しい名前が出てきた。もし今帰ってきた『彼』が本当に『あのひと』だとしたら、自分がこのベッドに寝ていてはいけないのではないか。そう思いながらゲッカは体を起こした。
電気をつけない真っ暗な闇の中、『彼』の顔はおろかトバの顔さえも見えない。
そのトバが急にくるりと振り返ったので、ゲッカは慌てて布団を被った。
「お休みになるんでしたら僕のベッドをどうぞ」
「いえ、結構です」
「お仕事、忙しいのですか?」
「はい」
『彼』は先ほどから単語しか話さない。トバは少し沈んだ気持ちで『彼』を見た。『彼』は静かにため息をつくと、眼鏡を指で押し上げた。
「明日も学校があるのでしょう? 君こそもう休んだらどうです」
するとトバは百八十度向きを変え自分のベッドに戻る。布団を被りながら様子を窺うと、トバは自分のベッドから毛布を持って『彼』の元へ戻るとニッコリと微笑んだ。
「どうぞ。あなたに何かあるとカツイくんが心配しますからね」
「結構です」
「でもっ……」
『彼』はトバの肩に手を置くと、そのままベッドへ追いやる。そして押入れから薄い掛け布団を一枚取り出すと、そのままリビングのソファへ座った。
「――さんっ!」
(ん?)
ゲッカはトバが何と言ったのか聞き取れなかった。
「貴方に風邪をひかせると、私がカツイさんに怒られるんですよ」
(……)
結局ゲッカは疑問を残したまま徐々に眠りについていった。
「オレとあんま変わらねーぞ」
「もうっ! 僕じゃなくてミナリくんだよっ」
「あっ……」
なぜか顔を真っ赤にしながら二人を見ていたゲッカとハナ。そして二人はボソッとつぶやく。
「謎だよね」
「うん……」
その夜、ゲッカは扉の開く音で目を覚ました。時計を見ると午前三時。人が訪問するには遅すぎ、また早すぎる時間でもある。
ゲッカがその気配に気づくと同時に、隣のベッドの下段からトバが起き上がった。
「お帰りなさい」
「ええ……」
『あの人』。仮に『彼』と置くとして、『彼』はテーブルにこの家の鍵を置き、ネクタイをゆるめながらカバンを足元に置いた。
「あそこに寝ているのがゲッカくん。向こうの部屋でサクラさんのベッドで寝ているのがハナちゃんです」
『サクラ』。また新しい名前が出てきた。もし今帰ってきた『彼』が本当に『あのひと』だとしたら、自分がこのベッドに寝ていてはいけないのではないか。そう思いながらゲッカは体を起こした。
電気をつけない真っ暗な闇の中、『彼』の顔はおろかトバの顔さえも見えない。
そのトバが急にくるりと振り返ったので、ゲッカは慌てて布団を被った。
「お休みになるんでしたら僕のベッドをどうぞ」
「いえ、結構です」
「お仕事、忙しいのですか?」
「はい」
『彼』は先ほどから単語しか話さない。トバは少し沈んだ気持ちで『彼』を見た。『彼』は静かにため息をつくと、眼鏡を指で押し上げた。
「明日も学校があるのでしょう? 君こそもう休んだらどうです」
するとトバは百八十度向きを変え自分のベッドに戻る。布団を被りながら様子を窺うと、トバは自分のベッドから毛布を持って『彼』の元へ戻るとニッコリと微笑んだ。
「どうぞ。あなたに何かあるとカツイくんが心配しますからね」
「結構です」
「でもっ……」
『彼』はトバの肩に手を置くと、そのままベッドへ追いやる。そして押入れから薄い掛け布団を一枚取り出すと、そのままリビングのソファへ座った。
「――さんっ!」
(ん?)
ゲッカはトバが何と言ったのか聞き取れなかった。
「貴方に風邪をひかせると、私がカツイさんに怒られるんですよ」
(……)
結局ゲッカは疑問を残したまま徐々に眠りについていった。



