お嬢様は結婚したくないっ!

 母、真弓が皆の前で言う。

「お昼なら私が作りますけど……。亜子お嬢様のお口に合うものが作れるかしら……」

 その言葉に亜子は、あたふたとし始めた。

「い、いえ。そんな!」

「食材はある程度なら台所にあります。私もお手伝いしましょうか?」

 執事の御影が言うと真弓はうーんと悩んでから話す。

「そうですねぇ、お手数をかけたくないのですが、亜子お嬢様の好みを知らないので……」

「まぁ、お嬢様はトマトと納豆が食べられないぐらいですよ」

 自分の苦手な物を暴露され、亜子は大きめの声を出す。

「み、御影さん!!」

 そんな様子を真弓はニコニコと見つめていた。

「あらあら、そうなのですね」

 そんな時、真菜が体の前で手を合わせて笑顔で言う。

「それじゃ、皆で作ろうよ! ね?」

 真幸もうーんと考えてから同意する。

「確かに、執事になるからには、俺も料理ができるようにならないといけないしなぁ」

 それを聞いて真菜は右手の親指を上げて言った。

「よしっ! 決まりだね!」



 豪邸に戻り、厨房へと入る御影と釧路家の面々。そこに何故か亜子までいた。

 真菜がそれに気付いて亜子に言う。

「亜子お姉様はゆっくり待っていて下さい!」

 だが、亜子は首を横に振った。

「い、いえ! 私もお料理の勉強をしたいですし……」

 そう言われ、真弓は困ったような顔をする。

「あらあら、困ったわ。そんなお手本になるような料理は作れないわ」

 亜子はまた慌てだした。

「そんな! 大丈夫ですよ!!」

 厨房で真菜は元気よく声を出した。

「よーし、それじゃ食材チェック!」

 真弓も同じようなテンションで言う。

「イェーイ!」

「真菜、母さん。恥ずかしいからやめて」

 真幸は低めのテンションだったが。

「それじゃ失礼して、冷蔵庫を……」

 業務用の大きな冷蔵庫をがばっと開ける真菜。

「うわー、いっぱいあるー!」

 野菜を始めとした食材がたくさん並んでいた。

「冷凍庫は……って、これは!?」

 冷凍庫を開けた真菜が目を輝かせて驚きの声を上げる。

「何か高級そうなお肉だ!!!」

 手に持ったのは赤身にサシが十分に入った高級なお肉だ。

「あらあら、本当ねぇ」

「真菜、恥ずかしいからやめなさい」

 釧路家のテンションに思わず笑みがこぼれる亜子。

「すみません、亜子お嬢様。うるさくしてしまって」

「い、いや! 大丈夫だよ!!」

 食材をある程度見て真弓はメニューを考えた。

「ちょっと、お時間かかるかもだけど、大丈夫でしたら肉じゃがなんてどうでしょう?」

「母さん、亜子お嬢様が肉じゃがなんて庶民のモノ食べるわけが……」

 真幸はそう言うが、亜子は思わず赤面して小声で言う。

「あの、私好きです。肉じゃが……」

「ですよねぇ!? 肉じゃがって言ったらそりゃ、もう嫌いな人が居ない、日本を代表するお料理ですもんねぇ!?」

 慌てて手のひらをひっくり返す真幸。

「そうと決まれば! 真幸、真菜。美味しい肉じゃがを作るわよ!」

 真幸と真菜は元気よく返事をした。

「合点承知の助!」

「オッケー母さん!」