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「おや、あんた、財糸村へ移住を考えているのかい?よく考えた方がいいよ。あそこにはネバタマ様っていう化け物がいるからね。口から糸を吐き出して、幼い子どもを糸で巻き付けるんだ。え?そんなもん、いるわけないって?本気でそう思ってるのかい?悪いことは言わない。今ならまだ間に合うよ。移住は考え直した方がいい。きっと後悔するよ。すでに五人の子どもたちが行方不明になってるんだから。よく考えてから行動するといいよ。いいかい?あの村はね、蚕の神様が祀られているからね。蚕で潤った村だからね。
でもね、ネバタマ様は村の誰かが起きている時は出て来ないんだ。だから、もしお子さんがいるなら寝ずの番をするように。そうさなあ。三日間寝ずに頑張れば、ネバタマ様は諦めてくださる。あんた、その覚悟はあるのかい?もし、あるのなら、これ以上は引き留めないよ」
十一月二十六日
社殿の前の木の上に放置されたカメラはある物体を捉えていた。
芋虫のように地を這うその物体は音もたてずに動き始めた。
静かな夜だった。時折、虫の鳴き声が少しだけ聞こえるだけだ。
ネバタマ様の触角がカメラを意識した。しばらくじっとしていたが、再び、ネバタマ様が動き始めた。
その姿は蚕そのものだった。
(了)
「おや、あんた、財糸村へ移住を考えているのかい?よく考えた方がいいよ。あそこにはネバタマ様っていう化け物がいるからね。口から糸を吐き出して、幼い子どもを糸で巻き付けるんだ。え?そんなもん、いるわけないって?本気でそう思ってるのかい?悪いことは言わない。今ならまだ間に合うよ。移住は考え直した方がいい。きっと後悔するよ。すでに五人の子どもたちが行方不明になってるんだから。よく考えてから行動するといいよ。いいかい?あの村はね、蚕の神様が祀られているからね。蚕で潤った村だからね。
でもね、ネバタマ様は村の誰かが起きている時は出て来ないんだ。だから、もしお子さんがいるなら寝ずの番をするように。そうさなあ。三日間寝ずに頑張れば、ネバタマ様は諦めてくださる。あんた、その覚悟はあるのかい?もし、あるのなら、これ以上は引き留めないよ」
十一月二十六日
社殿の前の木の上に放置されたカメラはある物体を捉えていた。
芋虫のように地を這うその物体は音もたてずに動き始めた。
静かな夜だった。時折、虫の鳴き声が少しだけ聞こえるだけだ。
ネバタマ様の触角がカメラを意識した。しばらくじっとしていたが、再び、ネバタマ様が動き始めた。
その姿は蚕そのものだった。
(了)

