婚約者は狼神!? 帝国の守護神の通訳として雇われた私、なぜか溺愛されてます!

「ちょっとだけですよ。颯雅様に知られたら怒られますからね」
 運転手の答えに、燈子は目を輝かせた。

 最初にエンジンのかけかたを教わる。
 ギアがニュートラルに入っているのを確認してから、車の前面にまわる。次いでクランクハンドルを押し込みながら回すのだという。
 渡された革手袋をはめてクランクハンドルをぐるっと回すが、途中で止まってしまった。

「あれ? 堅い」
 困惑する燈子を見て運転手がくすっと笑う。

「力が必要なんですよ。もっと思いっきり」
 何度挑戦しても途中でつっかえて止まる。そのうち手が痛くなり、もうだめだと思ったころにようやく、ぶるん、とエンジンが始動した。

「かかりました!」
「では車へ」
 言われて助手席に乗り、運転手が運転席に乗って説明する。

「これがホーンです。危険を知らせるために鳴らします」
 ゴム製の丸いボールを握ると、前のラッパ部分から『ぷわ!』と音が鳴った。

「座席横のハンドレバーでギアを調節します。ハンドル左のレバーは点火の調整、右のレバーは速度の調整。足元にある三つのペダルのうち、左がクラッチ、真ん中がリバース、右がブレーキです」

 耳慣れない言葉に燈子は混乱した。ギアってなに? クラッチって?
 恥ずかしいけれど、いちいちそれを聞くと、運転手は面倒なそぶりも見せずに説明してくれた。

 続いて、実際に運転しながら操作方法の説明を受けた。
 運転は思ったより大変そうだ。手足を同時にあれこれ動かさねばならず、周りを見ての安全確認も必須。雨が降ったら手動でワイパーを動かさねばならず、それでも視界は良好とは言いがたいらしい。