婚約者は狼神!? 帝国の守護神の通訳として雇われた私、なぜか溺愛されてます!

「何をする!」
 怒鳴りつける颯雅に、絶句する燈子。
 真世はつんと顔をそらして出ていき、女中はおろおろとその後ろをついていった。
 いつもの意地悪だ、とは思うものの人前でまでこんな扱いを受け、胸が痛い。料理人のことを思うと申し訳なくて無性に苦しい。

「すみません、片付けます」
 しょんぼりとうなだれる燈子の頭を、颯雅はぽんと撫でる。
「一緒にやろう。俺が挑発したせいもある」

「雑巾を持って参ります」
 それまで黙っていた警備兵が慌てて部屋を出ていく。

「申し訳ございません」
「お前のせいではない」
 颯雅の声が優しくて、燈子はなおさら申し訳なくなった。



 意外なニュースが新聞で報道されたのは翌日のことだった。
 朝、それを見た綾月家の食卓は気まずいものとなっていた。
 功之輔は難しい顔をしているし、人の姿の颯雅は見るからに不機嫌で、燈子はいたたまれない。

「よりによってあの女が俺の婚約者としてゴシップが出るなど」
 今朝見た新聞の一面には颯雅が人の姿になったこと、真世が婚約者であることなどが写真つきで載っていた。内容によると、前日に第一報が出た東日新報夕刊の後追い記事らしい。

「すみません。妹が新聞社になにかを言ったのでしょうか」
「違うだろう。東日新報の記者が居合わせた、と書かれている。しかし」
 颯雅は忌々しげに息を吐いた。