婚約者は狼神!? 帝国の守護神の通訳として雇われた私、なぜか溺愛されてます!

「俺の婚約者は燈子だけだ」
 遅れて入ってきた颯雅は不機嫌だった。

「颯雅様、お会いしたかった!」
 真世は顔を輝かせて颯雅に向き直る。

「昨日はありがとうございました。命をかけて助けてくださって。今日も白銀の髪に黄金の瞳が素敵です」
 抱きつかんばかりに近づく真世に、顔をひきつらせた颯雅は思わず一歩を引く。

「命などかけていないが……」
「私、気が付きました。颯雅様の思いに。ですから今日はお弁当を持ってきて差し上げましたの」
 颯雅は顔をひきつらせたまま真世に白い眼を向ける。未知の不快な生物を発見した、と顔に書いてある。

 真世は気が付いた様子もなくテーブルに寄り、風呂敷を開け、重箱の蓋を開ける。
 中身は真世が作れるとは思えない豪華な料理だった。
「腕によりをかけて作らせましたの。さあ、お召し上がりください!」

 燈子は首を傾げた。腕によりをかけて「作らせました」とは。

「なにが入っているかわからんものを食えるか!」
 にべもない颯雅に真世はいきり立つ。

「この私が持ってきてあげたのに!」
 実際に運んだのは隣の女中だよね、と燈子は彼女を見る。
 女中はげんなりしながら無言で突っ立っている。

「そもそも婚約者を騙って入り込もうとするなど」
(まこと)の婚約者は私ですもの」
 真世は得意げに顔をそらす。