婚約者は狼神!? 帝国の守護神の通訳として雇われた私、なぜか溺愛されてます!

「公爵子息の未来の妻よ。通していただけますわよね」
「できません」
 取り付く島もなくて、真世はむっとした。

「もういいわ!」
 真世は顔をつんとそらして中に入ろうとする。

 男性はそれを阻み、もうひとりが女中の持つ風呂敷をつかんだ。
「不審者め! 逮捕する!」
「はあ!?」
 真世は素っ頓狂な声を上げた。

***

 颯雅の婚約者を称する不審者が現れた。大鶴真世を名乗っている。
 そう聞かされた燈子は、まさかと思いながら応接室に飛び込んだ。
 そこにいたのは間違いなく真世。そばには困惑顔の女中と無表情の警備兵が立っている。

 真世はいったんは逮捕されたものの、取り調べで燈子の妹だとわかって応接室へと移動され、確認のために燈子が呼ばれたのだ。

「真世様、どうしてここに」
「あんたこそ、どうしているのよ」
「いったいなにをしたんですか」
 問いには答えず、燈子が重ねて尋ねる。

「私は婚約者の颯雅様にお弁当を持ってきただけよ。なのにこの扱い! ソファは固いし部屋は地味、本当にお国の応接室かしら。もっと豪華にするべきよ」
 ぷりぷりと怒る真世。テーブルには大きな風呂敷包があった。
 どういうこと、と燈子はいぶかしげに黙る。