婚約者は狼神!? 帝国の守護神の通訳として雇われた私、なぜか溺愛されてます!

 続いて声の主を見ると、颯雅がサーベルの血をハンカチで拭って鞘に戻すところだった。

「た、助けてくれたの……?」
「兵士としての義務だからな」
 仕方ない、と言わんばかりにこぼす颯雅は、陽光を背にして妙にまぶしい。

「颯雅様、ご無事ですか!?」
 駆け付ける燈子に、颯雅はふっと笑って見せた。

「たわいもない」
 颯雅は余裕の笑みを浮かべている。

「あんな大きなあやかしを」
「たったの一太刀で」
「すごい軍人さんだ!」
 逃げた人たちが戻ってきて颯雅をほめたたえる。

 街の人たちが協力してあやかしの死体をどかし、真世は救出された。

「あの方が私を助けてくださった。燈子なんかより私を」
 真世は喝采を浴びる颯雅をどきどきと見る。
「きっと本当は私のことが好きなのね」
 真世はうっとりとこぼした。

 すぐに軍が駆け付けて規制が入った。あやかしの死体は軍の研究所で検分されるという。

 燈子と颯雅は兵士による事情聴取を受けたのち、自宅に送られることになって軍の車に乗る。去り際、真世もまた軍の聴取を受けているのが見えた。このあとはあやかしからの病気が発生しないように病院で血清を注射されるのだという。

 走り出した車内で颯雅は燈子に言う。
「よくサーベルに気づいたな。燈子の手柄だ」
「たまたまです。それより、サーベルを買い取ることになってしまって申し訳ありません」
 燈子は申し訳なくなって小さくなる。

「ささいなことだ」
 子供にするみたいに頭を撫でられて、居心地が悪くて身じろぎした。恥ずかしいのに嬉しくもある。