婚約者は狼神!? 帝国の守護神の通訳として雇われた私、なぜか溺愛されてます!

 颯雅は無言で受け取り、鞘から抜きはらった。燈子を背にかばってあやかしに向けると、それは動きを止めて颯雅を注視する。
「お前は逃げろ」
「でも」
 燈子はためらった。自分だけ逃げていいようには思えない。なにか手伝えることがあれば力になりたい。

「だったら避難誘導をしてくれ」
「はい!」
 燈子の性格をわかっているのだろう、颯雅の配慮にすぐに動く。

「みなさん、今のうちに逃げてください!」
 燈子が叫ぶが、むしろ騒ぎが気になって様子を見に来る人がいる。
 あやかしがぐるるとうなりながら後退し、こわごわ様子をうかがっていた人のほうへ走り出す。

「きゃああ!」
 逃げる人に押され、真世が転んだ。
 暗い影が落ちて振り返ると、あやかしが大きく開けた赤い口からよだれを流し、真世を見下ろしている。

「い、いやあ……」
 恐怖で腰が抜けて立ち上がれず、真世は少しでも逃げようとずるずると這いずる。

 直後。
 きらり、と何かが光った。
 それが陽光を反射したサーベルだと気づいたときにはあやかしが自分に向かって倒れてくる。

「きゃああ!」
 よけられず、あやかしがかぶさって真世は悲鳴を上げる。
「落ち着け、あやかしはもう死んでいる」
 冷たい声にあやかしを見ると、確かにもうぴくりとも動かない。