婚約者は狼神!? 帝国の守護神の通訳として雇われた私、なぜか溺愛されてます!

「私、幸せ者です。今日死んでもいいくらい」
「まだ足りない。まだ死ぬな」
 颯雅がふふっと笑い、燈子は彼を見る。

「本当にすごく幸せなんですよ」
「そうか」
 颯雅は笑みを浮かべたままりんごの花に目を向ける。
 燈子も視線を追い、見上げた。風がそよぎ、青い空を背に白い花が揺れる。

「悪かったな」
 笑みを消した彼は、燈子に黄金の瞳を戻した。

「あらぬ疑いをかけたり、助けが遅くなったり。迷惑をかけた」
「いいえ、私こそ申し訳ありません」
 あのとき、彼に迷惑をかけたくなくてひとりで家を出た。なんと愚かだったのかと今ならわかる。彼に相談するべきだった。そうすればあんなに不利な状態で戦わなくて済んだのだ。

「気にするな」
 颯雅は頭をぽんぽんと撫でるようにたたく。
 最近はこれが気に入っているようだ。幼い子にするみたいだと思うが、どうにも嬉しくなってしまう。

「また狼に戻るようになったのはどうしてなのでしょう」
「精神的なものでは、と医者が言っていたな。おそらく俺は、狼に戻るのが怖くなっていた。お前と一緒にいたいと思ったがために」
 目を丸くする燈子に、颯雅はふっと笑う。

「妻として、これからも頼むぞ」
「はい。人になるために必要ですものね」

「それだけでお前を娶るほど薄情ではないぞ」
「え!?」
 燈子がまた驚くのを見て、颯雅は楽しそうに目を細める。