婚約者は狼神!? 帝国の守護神の通訳として雇われた私、なぜか溺愛されてます!

「良い出来だ。礼を言う」
 颯雅は満足そうだ。

「こちらこそありがとうございます。帝国の守護神を撮影させていただけて光栄でございます」
 店主はにこにこして続ける。

「失礼ですが、奥様は旧姓を大鶴様とおっしゃるのではないですか?」
「どうしてそれを」
 まだ結婚していないから旧姓ではなのだが、燈子は驚いた。

「以前に写真をお撮りしましたとき、どうにも覚えがありまして。探してみたらこちらが出て参りしました」
 店主は棚から一枚の額縁を取り出し、燈子に見せる。
 燈子は驚き、両手で口を覆った。

「お母様……!」
「やはりそうでしたか。移転前の当店で七五三のお写真を撮られたようです。面差しがよく似ておられます。父が撮影したのですが、良い写真だ、と気に入ってとってあったようでして」

 店主が差し出すから、燈子は震える手でそれを受け取った。
 写真の母は大きな椅子に腰かけて慈愛に満ちた笑みを浮かべており、横に立つ小さな燈子は晴れ着を着て誇らしげだ。

 もう二度と母を見られないと思っていた。こんなところでこんな形で再会できるなんて。
 ぽたり、と涙がガラス面に落ちて、燈子は慌てて拭った。

「お母様、お母様」
 燈子はぎゅっと額縁を抱きしめる。その瞳からはとめどもなく涙があふれ、鼻をすする。
 嬉しくても涙が出るのだと、涙がいっぱいで胸が痛くなるのだと、このとき初めて知った。

「店主、この写真をもらえないか」
 颯雅が言うと、
「ええ、もちろんどうぞ」
 店主は快く応じた。