婚約者は狼神!? 帝国の守護神の通訳として雇われた私、なぜか溺愛されてます!

「切りたかったら切ればいいです。あなたにできるなら」
「なんですって!?」

「できないですよねえ。処分費用すらケチってるんですから」
 颯雅と出向いたあのとき、麻子は費用に言及していた。それだけ家計が逼迫(ひっぱく)しているのだろう。

「つぶれるものはつぶしてしまえ。商才がないのに会社を経営するのはむしろ不幸だ」
 颯雅は侮蔑を隠さない。

「そ、そんな。これからどうやって生きていけばいいのか」
「ひどいことをおっしゃらないでくださいませ」

「知るか」
 颯雅はにべもない。

「妻の実家ですよ!」
 正雄は颯雅にすがりつこうとしてよけられ、床に手をついた。

「燈子、頼む、父がこうまでして頼んでいるのだから」
 正雄が涙目で言うのだが。

「こういうときだけ家族の顔をしないでください!」
 燈子の拒絶に、正雄は愕然とした。

「そんなことを言う子じゃなかったのに、どうしたんだ……」
「お父様がわかってなかっただけです。私を見ようともしなかった。今だって颯雅様が言うまで私なんて存在しなかった」

 言いながら、涙が浮かんできた。
 長い間、父のことで泣くなんてなかった。自分を見てほしいと最後に願ったのはいつだっただろう。

「燈子」
「大丈夫です」
 毅然とする燈子に、颯雅は頷いて先を促す。