婚約者は狼神!? 帝国の守護神の通訳として雇われた私、なぜか溺愛されてます!

 ほっと息をついた燈子を、颯雅が振り返る。ずかずかと歩いてくる彼の黄金の目は鋭い。

 似た場面は何度も経験した。こういう様子の真世や麻子はたいてい燈子を殴る。
 燈子の体はとっさに逃げの態勢になったが、疲れ果てていて立ち上がることもできない。
 颯雅が目の前に立ち、彼女は覚悟して目をつむり、体を硬くした。

 だが、訪れたのは衝撃ではなかった。
 温かく包み込まれ、燈子は驚きで目を見開く。
 存在を噛みしめるようにぎゅうっと抱きしめられ、ただただ戸惑う。

「颯雅様……」
「お前になにかあったら、この世のすべてを呪う」

「大げさな」
「大げさではない」
 体を離して颯雅は言う。

「二度と心配させるな」
「……ありがとうございます」
 それだけしか言えなかった。心配するだけではなく、助けに来てくれた。どれだけ嬉しかったか、どう言葉にすればいいのかわからない。

「わん、わん!」
 シロマツが嬉しそうに飛びついてきて、燈子はよろめいた。颯雅がとっさに彼女を支える。

「シロマツ、呼んできてくれてありがとう。みんなも、ありがとう」
 燈子が軍用犬たちを見ると、彼らは誇らしげに立っている。

「シロマツが呼んだのか。よく頑張ったな」
 颯雅が撫でるとシロマツは嬉しげにしっぽを振る。