婚約者は狼神!? 帝国の守護神の通訳として雇われた私、なぜか溺愛されてます!

 大きく振られた燈子はあちこちに体をぶつけ、上下すらわからなくなった。割れたガラスが降ってきて全身の痛みで動けず、うめき声をあげるのが精いっぱい。あちこちを打ったり切ったりしたが、大きな破片が刺さらなかったのが不幸中の幸いだ。

「燈子!」
 声がしたほうを見ると、颯雅が天井となった窓から覗き込んでいる。

「無事か!」
「はい……」
 颯雅の手を借りて車から出たが、横倒しになった車の周囲を犬たちが囲んでいて、もう降りられない。

「お前のおかげで助かった」
 颯雅の目は油断なくあやかしたちを見下ろしている。

「でも、もうダメかもしれません」
 ガソリンが漏れたらしく、臭いが充満している。

 燈子は運転手の言葉を思い出した。
 事故を起こすと車が爆発することがある、と。
 こんなに臭うからにはかなり危険な状態ではないのだろうか。

 すぐに引火すると言っていたが、どれくらいすぐだろう。自然に発火してしまうのだろうか。
 すぐに避難したいが、降りた瞬間、牙で八つ裂きにされそうだ。

「もし車が爆発したら……」
「そうだな。あいつらは俺がひきつけるから逃げろ」

「無理です、もう足が動きません」
「……車さえ動けば」
 颯雅は悔しそうにぼやく。
 あやかしの犬がとびかかるのを、颯雅が軍靴で蹴り飛ばす。