婚約者は狼神!? 帝国の守護神の通訳として雇われた私、なぜか溺愛されてます!

 負荷に耐え切れずに刃が半ばで折れた。
 病狗はすぐに刃を吐き捨て、颯雅にとびかかる。

 身をひるがえした颯雅は折れた刀を構え、病狗たちを牽制する。が、じりじりと押され、とうとう木を背にしておいつめられる。
「帝国の守護神もここまでだな」
 くくく、と病狗が笑ったとき。

『ぷわああああああ!』
 聞きなれない音が、森の中に響き渡った。

***

 燈子は颯雅と病狗との戦いを車から見守り、はらはらしていた。
 あやかしの犬は車をとりかこみ、車体を噛んだりするものの、牙が車を貫通することはない。

 がたがたと車体が揺れて怖いが、鉄のボディなら大丈夫、と両手をぎゅっと握りしめて耐える。

 その目はずっと、颯雅を見守っている。
 犬たちを斬っていた颯雅の動きが、疲労で鈍くなるのがわかった。
 犬たちは次々と新手が現れ、疲労はない。

 颯雅は燈子の乗った車も気にかけていて、だから余計に疲れるはずだ。目の前の敵に集中できず、反応が遅れることもある。
 病狗は体力を温存し、にたにたと笑いながら颯雅を見ている。

 どうにか加勢できないだろうか。
 燈子は必死に考える。
 だが、自分も疲れ果てているし、なにより戦う能力なんてない。

 あやかしの犬の爪がガラスにひびを入れて、燈子は短く悲鳴を上げた。このままでは割れてしまう。タイヤを噛まれたらパンクの可能性もある。