婚約者は狼神!? 帝国の守護神の通訳として雇われた私、なぜか溺愛されてます!

「そ、そんなご無体な」
 正雄はおろおろと颯雅に手を伸ばす。

「無体はこいつだ。かばうならお前も斬る」
 刃を向けられ、正雄はすぐさま逃げ出した。

「お父様!」
 追おうとした真世の眼前に颯雅がサーベルをかざし、真世はびくっと止まった。黄金の瞳に宿るのは、濃厚な殺気。

「言え。燈子になにをした」
「わ、私は連れて行っただけよ」

「だからどこだ!」
「森の奥の小屋、命令されて仕方なく」
「誰の命令だ」

 真世は口を引き結んで目をそらす。
 その眼前に、颯雅は切っ先をつきつけた。

「刻んでやったら思い出すか?」
 真世はひっと悲鳴を上げてのけぞり、しりもちをついた。

「あ、あやかしに命令されたの。人の顔をしたやつ」
「あの時の病狗か」
「そう、仕方なかったの、殺すって脅されて、だから……」

 颯雅は舌打ちし、サーベルを鞘に戻すとすぐさま玄関を出た。
 警備兵になにがあっても真世を逃がすなと厳命し、ひとりには駐屯所に「森に病狗が出た」と知らせを送るように命じる。

 間に合ってくれ。
 颯雅は乗り込んだ車を急発進させた。