婚約者は狼神!? 帝国の守護神の通訳として雇われた私、なぜか溺愛されてます!

「お前、運がいいなあ。今、干し肉を持ってるんだよ。味が濃いからちょっとだけな。明日になったら大尉の家に送ってやるから」

 そう言って当直の兵士はジャーキーをちぎってシロマツに与える。
 シロマツは、わん! と答えて嬉しそうにほおばった。

***

 研究所にいた颯雅は、就寝時間を過ぎたのに着替えもせずに本を読んでいた。
 与えられた一室はベッドとライティングデスクだけの質素なつくりだ。

 研究所では狼に戻る実験以外に戦闘訓練を行い、対戦能力の成長を計測している。実質、軍で訓練をしているのと変わらない。

 ついでに車の運転も習った。もうすぐ免許制度になるというから、その前に運転できるようになっておきたい。燈子を隣に乗せてドライブしたい、という気持ちがないでもない。

 本来、泊まり込む必要はなかった。が、家にいると燈子にまた感情をぶつけてしまいそうで、研究所に頼み込んで泊まっていた。
 思えば、これまで対等に話の通じる人などいなかった。

 しかし今は普通に話ができる。しかも燈子は自分を受け入れてくれた。
 だから彼女への甘えが生まれたのかもしれない。自分のほうが八つも上だというのに、噴飯ものだ。

 今まで恋などする余裕がなかったし、疎まれた存在だと自覚していたから、嫁を娶れと言われても拒否してきた。

 だが、燈子の屈託のなさにいつしか心惹かれた。これが恋かと気づいたときには戸惑いが大きかった。

 ほかの誰にも渡したくない。
 欲望はたやすく颯雅を飲み込んだ。幸いにも婚約者という立場。このまま結婚してしまえば自分のものだ。