婚約者は狼神!? 帝国の守護神の通訳として雇われた私、なぜか溺愛されてます!

「連れてくるのはあの男ひとり。でなければこの女の命はないぞ」
「ダメよ! 連れてこないで!」
 燈子はとっさに言っていた。

「ほう?」
 病狗は楽し気に燈子を見る。
「どうしてダメなんだ?」
 問いかけに、燈子は言葉につまる。

「あいつが今は狼になれないからか?」
「違うわ。出張で近くにいないの」

「わかりやすい嘘を言う」
 くくく、と病狗は嘲笑う。
「ほ、本当はケンカして破談なの。だからもう颯雅様は来ないわ」
「それほどあいつを守りたいということか」

 病狗の言葉に燈子は歯噛みした。
 こんな大事な時に大失敗だ。自分を責めてももう遅い。
 燈子はしゃがみこみ、シロマツのひもを首輪からはずした。着物の片袖を引きちぎってその首輪に挟み込む。

「なにをしている。形見の準備か」
 病狗は燈子をせせら笑い、真世に目を戻す。

「今が好機。逃す手はない。いいか。呼び出しに失敗したらお前も食らうぞ。俺はいつでもお前のところにいけるんだからな」
 病狗はダメ押しで真世を脅し、真世はびくっと震えた。

「わ、わかってるわ」
「では行け」