婚約者は狼神!? 帝国の守護神の通訳として雇われた私、なぜか溺愛されてます!

「話ってなんですか?」
 燈子に話しかけられ、真世は、ふん、と鼻を鳴らした。

「ゆっくり話ができるところに行くわよ」
「ここで話せないのですか?」

「あんたも私に用があるんでしょ。だったらついてきなさいよ」
 燈子は一瞬考えるそぶりを見せたが、わかりました、と答えた。

***

 真世について歩きながら、燈子は常に警戒していた。
 あやかしも怖いし、いつ真世が態度を変えるかわからない。罠だったときにはすぐに逃げなければ。

 月は雲に隠れて真っ暗で、真世の足取りは遅い。
 真世がびくびくと森の中に入って行くから、仕方なくついていく。さらに暗くなり、足元が不明だ。かさかさと枯れ葉を踏む足音だけが重なる。

「どこまで歩くのですか?」
「黙ってついてきなさいよ」
 いらいらと答える声には焦りと恐怖がにじんでいた。

 おかしい。
 燈子の中でなにかが警鐘を鳴らす。

 そのとき、シロマツがぴくっとなにかに反応した。
 直後、今までに聞いたことのない低いうなり声をあげる。

「シロマツ? なにかいるの?」
 燈子は自分を叱咤して尋ねる。小さな獣であればいい。あやかしでなければいい。そう思うが、シロマツが答えるわけもなく、う~、と唸り続けている。
 ダメだ、このまま行ってはならない。