婚約者は狼神!? 帝国の守護神の通訳として雇われた私、なぜか溺愛されてます!

 今回の訪問も警備の兵に見られている。廉次が一緒なのも見られた。
 また颯雅になにかを言われるだろうか。

 いや、いちいち文句を言うため戻るほど暇ではないだろう。
 研究所でなにをしているのか知らないが、忙しそうだし憔悴していた。

 帰ったらスエからお説教をくらうかもしれないが、それですませてくれるスエは優しい。真世や麻子なら悪罵とともに打擲(ちょうちゃく)が伴うから。

 記者とも別れて帰路についたときだった。
 たたっと走り寄る気配に振り向くと、喜美がいた。
 真世の腰ぎんちゃくがなにをしに、と燈子は警戒する。

「やっと追いついた。さっさと行くんじゃないわよ」
 息を切らせて喜美が言う。

「なんの用?」
「真世様の御用よ。これ」
 手紙を差し出され、燈子は受けとる。

「綾月様のお宅に届けてもいっつも突っ返されて迷惑。何度足を運んだと思ってるのよ。あんたの癖に断るなんて生意気!」
 受け取りを拒否していたのはスエだ。喜美はスエにどんな態度をとっていたのかと申し訳なくなった。帰ったら謝らなくては。

「受け取ったんだからもういいでしょ。二度と綾月の家に来ないで」
 燈子が言うと、喜美はふんと鼻を鳴らした。

「調子に乗ってんじゃないわよ、あんたなんかあやかしに食われればいいわ!」
 面罵し、喜美は踵を返す。

 燈子は不快さにこぶしを握り締めた。
 あんなふうに言われる筋合いはないし、言い返したい。だが、今はそれどころではない。
 すぐに封を切り、取り出して読む。