婚約者は狼神!? 帝国の守護神の通訳として雇われた私、なぜか溺愛されてます!

「……わかりました」
 燈子は殊勝にうつむいた。

 が、心の中には炎が燃えている。
 言うことなんて聞くものか。
 ここに嫁ぐとき、私は颯雅様を幸せにするって決めたんだから。



 翌日、燈子は黙って家を出た。スエが気づいたときに心配しないように「散歩に行ってきます。必ず戻ります」と置手紙を置いて。
 待ち合わせていた公園で廉次と会ってすぐ、燈子は言う。

「本当の婚約者は私だ、と記事を書いてください」
 廉次は丸眼鏡の奥の目を丸くした。

「どういう風の吹き回しですか」
「あやかしが颯雅様の婚約者を狙っているのかもしれないんです。だったら私が婚約者だと言えば私を狙ってくるでしょうし、そうしたら写真も撮りやすいでしょう?」

「あやかしが新聞を読めるとは思えません。もし本当に襲われたらますますあやかしの操作を疑われますよ。少なくとも私は疑います」
「それでも、動きがあれば次へ進めます」
 断言する燈子に、廉次は面白がるように目を細めた。

「勇敢なお嬢さんだ。いいでしょう。新聞に載せる写真を撮らせていただいても?」
「それが役に立つのでしたら」
 廉次は満足そうに頷いて、そのまま公園で写真を撮り始めた。
 何枚か撮影し、それから真世に会うために燈子の実家に向かう。

 だが、面会は拒否された。
 真世が会いたがっていると聞いていたのに、と燈子は歯噛みする。嫌がらせで呼びつけただけかもしれない。真世ならやりそうだ。