婚約者は狼神!? 帝国の守護神の通訳として雇われた私、なぜか溺愛されてます!

「でも、それなら否定の報道をしないのはなぜですか?」
「証拠がないのですよ」
 そういえば最初にも証拠の有無を聞かれた。

「ゴシップを書いた記者も証拠なく書いているのでしょうが、同じように臆断で書くのはポリシーに反します。それは正しい報道ではありません。会社も同じ見解で、だからあの報道に対して疑義を唱えて軍の主張を載せても、否定の報道はしていません」
 不誠実な人間は平気で不実を成すのに、正すほうは誠実でなくてはならない。なんて不公平なのだろう。

「だったら私が証人になります!」
 燈子は身を乗り出した。

「婚約者の証言は信憑性が薄いので無理ですね」
「そんな! 証拠なんて、どうやって見つければいいの……」

 燈子の語尾はしぼみ、悄然と椅子に座り直す。
 廉次からの応答はなく、彼は黙考の時間を稼ぐようにコーヒーを飲んだ。
 カップを静かにソーサーに置くと、彼は言う。

「では、私が調べましょう」
「え?」

「そのかわり、あなたと綾月大尉の独占インタビューを受けていただきたい」
「そんなことでいいのでしたら、いくらでも! 私も一緒に調べたいです!」
 前のめりな燈子の返事に廉次はにやりと笑い、眼鏡がきらりと光る。

「取引は成立ですね」
「はい」
 燈子は決意を込めて頷く。
 颯雅のために絶対に証拠を集める、と固く誓った。